黒の教団 食堂での一時

□お調子者のあなた
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『うーーん……無いなぁ……』

ブツブツ言いながら、目当ての本を探す。
ただ余りにも広く、怪しげな専門書も多く蔵書されている黒の教団本部の図書室。
通いなれている科学班やブックマンならともかく、滅多に来ない人にとっては骨の折れる作業だろう。


ひとみが探しているのは薬草の本。
先日、本部最高司令官であるコムイ室長よりジェリー料理長に相談があったのだ。


「ねぇジェリー。食べたらすぐに栄養取れて、傷の治りも早くなるような食事ってないの?」

「……コムたん。そんな夢のような食事があるなら、とっくに作ってるわよ〜!」


……大変ごもっともな返事である。
そんな食事が存在するなら、世界中でとっくに食されている事だろう。

さらにここは黒の教団。そこかしこに怪我人やら、徹夜続きでゾンビ化している人やらがいる。あるならそれこそとっくに作っている。

「いや、それはもちろん僕も分かっているよ?ただ普段の食事に少し工夫をしてさ。栄養の吸収を早くしたり、傷の回復を早められればなと思ったんだけどどう?」

「そりゃ薬草なり漢方なりを使えば、ちょっとは効果あるわよ?ただそうなると、どうしても味や匂いに問題が出てくるのよ〜!」



コムイ室長は本部で働く人の命を支えている。彼の判断一つで人の生き死にが変わってしまうのだ。だからせめて、怪我をしてしまったら早く回復させてあげたいと思うのだろう。


しかしジェリー料理長はあくまでも料理人。教団で働く人全員の胃袋を支えている。食事でストレス発散も出来たりするので、なるべく普通の料理を出したいというのがモットー。



どちらも教団で働く人の事を想っての事。どちらの意見も実現させたいが、生憎両立させるのは難しい。

普通の料理と薬膳料理をそれぞれ用意する事も考えたが、経費の関係で却下。

世界各国の人がこの教団では働いている為、料理も色んな国のを用意している。だから食材費が元々半端ではないのだ。


「何とか今の経費の中で、ちょっと考えてみてくれないかな?頼むよ、ジェリー!」

「もぉ〜、しょうがないわねん。コムたん直々の相談だし、ちょっと考えてみるわね!」

「わぁお、ありがと〜〜!ジェリー!」


そう言ってジェリーにガバッと抱き付くコムイ。元々二人はとても仲が良いのだ。


今回の話し合いではジェリーが折れ、何とか出来ないか試行錯誤をする事となった。

その結果、薬草や漢方などについて詳しく調べるようにと、ひとみに指示が来てしまったのだ。


『(まぁ確かに、科学班が栄養ドリンクとか作ると劇薬になるって言うしね……)』


科学班が作った妙な薬のせいで、エクソシストがよく被害にあっていると専らの噂だ。

そんな風に健康面を考えているのだから、変な実験を止めてほしいとつくづくひとみは思う。


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