黒の教団 食堂での一時

□美髪が自慢のあなた
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ちょうど昼食時の食堂。

注文口には行列ができる。だだっ広い食事スペースがあるとは言え、運が悪いと座れなくなってしまう。
それほど黒の教団の食堂は混雑してしまうのだ。


そんな中、注文口からはいつもの明るい声が聞こえてきた。


『いらっしゃーい!何にしますか?』


ここ黒の教団本部の食堂の看板娘、ひとみ。特別な美人ではないが、明るくよく笑い、誰に対しても同じ様に接する女性。

その為、教団の女性陣の中でも男性にはなかなか人気がある。


この前リナリーと一緒に食事をしている時など、遠くから何人ものファンに写真を撮られてしまったくらいだ。
(後程コムイが室長の権限フル活用で全て取り上げたらしい)


『Aセット2つにBセット1つおまたせー!』

ふぅと一息つくと、ピーク時の行列はほぼなくなっていた。
ようやく少し落ち着けるな〜と思っていると
、ある声が聞こえた。


「蕎麦」


たった一言だが、誰だかすぐ分かる。
と言うよりも、この蕎麦至上主義者は黒の教団の中でもたった一人しか存在しないからだ。


『あぁ、神田。いつも通りざるでいい?』

「ああ」

『天ぷらは?』

「いらねぇ」


ものすごく短い言葉だけだが、ちゃんと会話になっている。
神田をよく知る人は、余計な言葉を言わない方がスムーズだと分かっているからだ。

ひとみもよく分かっている人のうちの一人。


『はい、ざる蕎麦おまたせ!』

「ああ」


いつもならここで会話は終了するのだが、今回は珍しく続きがあった。


『ねぇ、神田。なんで今日は髪の毛下ろしてるの?』

「別に。前の任務の時に髪紐が切れてダメにしちまっただけだ」

『あらら』


少し続いた会話も以上で終了。神田は蕎麦を持って、スタスタと空いている席へ向かう。

ただいつもと違い、髪の毛は高く結われず下ろされたままだ。


神田って髪の毛長いから、邪魔じゃないのかなぁ……?

邪魔かどうかで言えば確実に邪魔だろう。
ただ本人はそんなに気にしていないご様子。

うーん、と少し考えて、ひとみは厨房にいるジェリーに声をかけた。


『ジェリー料理長!だいぶ落ち着いてきたので、ちょっとだけ抜けてもいいですか?』

ひとみの声を聞いて厨房からひょいとジェリーが顔を出し、食堂の状況を確認した。


「アラ、本当ね。これなら抜けてもいいわよん」

『ありがとうございます。すぐに戻りますね!』




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