夜空に願いを

□プロローグ
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目の前に広がるのは、広大な土地。遠くの方には巨大樹の森が見えている。
そしてその森の中からは、15m級の巨人がこちらに向かってゆっくり歩いていた。デカイが動きがノロマな奴なので、索敵班も戦わずに赤の信煙弾を打つだけで終わるだろう。


リヴァイはなるべく前に進むべく、エルヴィンとキース団長が指示する方向へと馬を走らせる。今回は前の壁外調査に比べて巨人との戦闘も少なく順調だ。それでもすでに3体討伐しているのだから、どれだけ巨人は生息しているというのか……


馬を走らせ続けると、徐々に日は傾いてくる。夜間になれば巨人も動かなくなるし、ようやく自分等も体を休める事ができる。馬だって日中ずっと走りっぱなしだったのだ、早く休ませてあげたい。

そして、とりあえず今日の夜営地である古城へと到達したのだった。





「馬の世話が終わったら各自休んでおけ」
「「はい!」」


厩舎に馬を引き入れる新兵にそう言葉をかけると、リヴァイは古城に入るのではなく裏手の方へと回っていった。
石造りの城壁に背を預けながら、腕組みをしていた。


「巨人相手でも『無敵リヴァイ』は健在だな」
「やっぱ兄貴は強ぇーぜ!」




ふとこの古城での今はもういない彼らとの会話を思い出す。リヴァイは苦々しく眉を潜めながら、チッと舌打ちをした。
まだあの二人を失ってからたったの3ヶ月。最期の夜を過ごしたこの古城に来ると、嫌でもその時の事を思い出してしまっていた。

ジャリ……という近づく気配がしたのはまさにその時だった。


「あ、いたいた!こーんな薄暗いところで何してるんだい?」
「…………チッ」


やって来たのはハンジ・ゾエ。色物揃いの調査兵団の中でも、1・2を争う程の変人だ。
巨人の研究をしているそうだが、リヴァイから言わせればマッドサイエンティストさながらであり、極力自分からは近づかないようにしている。
それなのに何を嗅ぎ付けてきたのか、ハンジは自分のすぐ隣で壁に背中を預け立っていた。


「リヴァイみたいな強者でも、感傷に浸っちゃうんだねぇ」
「うっせぇな、クソメガネ」
「何だよー!慰めにきたってのに!」
「いらん」

ドサッ!!ガラガラガラ………

漫才みたいなやり取りをしている最中、突然したのは何かが落ちるような音。
二人ともすぐブレードを引き抜きサッと構えるが、辺りはしーんと静まり返っていた。


「…………?」
「何だ、今の音は………こっちからか?」


ハンジが音のする方向を向くと、そこには元々は見張り台のような小さな塔が建っている。他に目ぼしい建物はないし、恐らくそこだろう。
パシュッとアンカーを打ち出し、小さな塔の屋上へヒュンと飛んでいく。
「あ、待ってよ!」と言いながら、ハンジも後を追いかけてきた。


塔の屋上に着地し立ち上がると、そこには目を疑うような光景があった。

「………………」

何も言葉を発せず、ただその場を見つめるリヴァイ。後からやって来たハンジもその場を見て固まってしまった。

「……えっ?えっ?な、何、この子……」

自分達と同い年くらいの女がぐったりと倒れていたのだ。






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