年下の綾部くん

□予想外なコト
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裏々山にある大きな楠木。
樹齢は……恐らく三百年とか経つかもしれない。

そんな立派で神聖な樹木でも、私にとっては気持ちのいい昼寝場所。
特に木の上の方の枝で寝るのがいい。そこなら下級生たちが登って来る事がなく、静かに過ごせるから。ただそれだけ。


今日は午後の授業はなく、昼寝には絶好の天気だったのでここに来てみたのだ。太い枝の上で幹に背を預けながら、ぼーーっと目の前に広がる青空を見つめる。

『………………』

ウトウトしながらも頭に浮かんできたのは、昨日の事。兵助と一緒の課題が終わって先生に報告に行った後………なぜか喜八郎と口吸いをしていた。
喜八郎の気持ちは何となく分かっていたけど、まさかあそこまでしてくるとは……
一応、初めてだったんだけどなぁ。

思い出したら、また顔が熱くなってきた気がする……!私がこんなに心乱されてどうするのよ!
昨日の映像が頭から無くなるように、顔をブンブンと振る。そして最後に出てくるのはため息。

『はー……………』
「大きなため息をつくと、幸せが逃げちゃうよ?」
『……………!』

驚いてキョロキョロと周りを見ると、私がいる枝の一段下の枝に声の主が立っていた。

「よっ、かすみ!何だかお悩み中?」
『勘ちゃん。何で悩んでるって思うのよ?』
「ついさっきでーっかいため息をついたのは、どこのどなたよ?」

ニッと口角を上げて、私の顔色を見ている。
勘ちゃんとは兵助という共通の友人がいるので、何だかんだとよく話す。ただ………ちょっと腹黒なところがあるので、こういう笑い方をする時は要注意だ。

『もし悩みがあるとして、その悩みを聞いてどうするの?』
「んー、俺がズバッと華麗に解決!……………出来ればいいかなぁ?」
『あっそ』
「かすみー……そんな可愛くない反応じゃ、そのうち兵助にも愛想尽かされちゃうよ?」
『兵助は愛想尽かさないもの』
「ふーん、幼馴染みの絆は強いってか?」

再びニッと口角を上げて笑う勘ちゃん……
ったく、結局何が言いたいの?特に悩みの解決をしてくれる訳ではなさそうだし、たぶん興味本意なだけだな。





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