年下の綾部くん

□私と周りの変化
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「今度は裏の方を掃除しておいて」
『はーい』

今、私はとある城へ忍び込んでいる。
女中の格好をして掃除の仕事をしているのだが、その合間合間に城の造りを把握していくのだ。
そして、今回の合同実習の課題でもある密書がどこに保管されているのかを調べているのだ。

かなり大きな城の為、今回の実習では下級生一人なら補佐として同行が許されている。なので、今回はユキに補佐をお願いしていた。
最初はちょっと不安なところもあったが、なかなかユキはいい働きをしていた。

部屋の中を探っている時に、外を見張っている守衛の気を逸らしてくれたり。見張りが気難しそうな相手の時は、私が見張りの気を逸らし代わりにユキが部屋の中を探る………といったような感じだ。

ただ目当ての物がなかなか見つからず、離れたところにいるユキとこっそり矢羽音で相談していた時だった。

「ん?お主……」
『……はい、何でございましょうか?』

見た目からして上等の着物を着ており、身分の高い役人だと思われる。
きちっと姿勢を正してお辞儀をすると、うーむと唸りながらジロジロと私の顔を覗き込んできた。

「お主、見かけぬ顔だな?入ったばかりか?」
『はい、さようでございます。つい先日召されたばかりでごさいます』
「ふーむ、やはりな……」

意味ありげな言い方で、なお一層私の顔をジロジロと見てくる。恐らく下品な男が考えるような事なのだろう、と考えていると、思った通りの言葉がかけられた。

「お主のような器量よし、一度見たら忘れるはずがないからな……」
『まぁ、お上手ですわね』
「ふむ…………どうだ、私の部屋で今晩酌をしてはくれないか?」
『私などでよろしければ……』

よし、と思い男性の誘いにオッケーを出す。今まで探れていなかった、上役の部屋を探すまたとないチャンスだからだ。

男性が去った後、木の影に隠れていたユキがこちらへと歩み寄ってくる。

「今晩行くんですか?」
『えぇ、見張りの連中は頼むね』
「わっかりました〜!任せてください」

張り切るユキを見送り、私はさっそく今晩の支度に取りかかるのだった。




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