年下の綾部くん
□僕の心のしこり
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「よし、生首フィギュアの化粧は落とせたかー?」
「はーい!」
「落とせました!」
「準備オッケーです」
「…………………」
今は作法委員会の真っ最中。
今日は首化粧の作法をやる為、まず生首フィギュアの化粧を落としていたところ。
立花先輩が後輩たちに出来たかどうか声をかけているが、僕は返事をする気分ではなかった。
「綾部先輩?」
「喜八郎、どうした?お前が気落ちしてるなんて珍しいな」
「………放っておいてくださーい」
委員会のみんなが心配そうにしている。でも僕の頭の中を占めているのは、あの時の光景だった。
手首を手拭いで縛り、僕が押し倒している状態。かすみは僕を見上げながら、涙を溢していた。
僕が泣かせてどうするんだ………
あれからずっとその事が心の中で引っ掛かっているのだ。
「綾部先輩……具合が悪いんですか?」
「……ううん、違う……」
声をかけてくれたのは、一年は組の笹山兵太夫。眉根を下げ、心から心配してくれているのが分かる。一年い組の黒門伝七と三年は組の浦風藤内も心配そうな顔でこちらを見ている。
委員長の立花先輩はこちらをじっと観察するように見つめている。
「喜八郎、何か悩みでもあるのか?」
「いえ、悩み……ではないです」
「じゃあ何があったんだ?そんな調子じゃ委員会どころじゃないだろう?」
「はい、すみません」
しゅーんとしていると、シュッと何かの影が目の前に現れた。
「うぶっ!」
「うわっ、た、立花先輩!?」
顔面に思い切りヒットした為、顔を押さえ悶える。側にいた兵太夫も突然飛んできたものにビックリしたようだ。
「いたた………もー、立花先輩?何投げつけたんですか……」
「生首フィギュアだが?」
「何で投げるんですかー!」
「お前がらしくもなく、ウジウジしてるからだ」
むすっと立花先輩を睨み付けるが、最上級生だけあって、どこ吹く風といった感じで流されている。
そして全てを見透かすような目でこちらを見つめられる。
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