年下の綾部くん
□土足で踏み込まれた!
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『………………』
この状況は、一体何………?
私は普通に学園の敷地内を歩いていたハズ。
そこに何も落ち度はなかった、うん。
この先に罠がある、という目印も見つけられていた。かなり小さい葉っぱで作った物だったけど、ちゃぁんと見つけていた。
そこにも落ち度はなかった、うん。
だから私はその罠を避けて歩いたハズなのに、何故か落とし穴にハマってしまった。
避けたところには何も目印はなかった。
という事は、私の落ち度ではない、うん。
『さて……………』
落ちた穴の入り口を見上げると、なかなかの高さがある。今持っている忍具では対処できなさそうだ。誰かが通りかかるのを待つしかない。
そしてこんな立派な蛸壺を掘れるのは、この忍術学園でも1人だけだ。この穴から出たらどうやって仕返しをしてやろうか……
くノ一として、色を存分に発揮してやるか……そんな事を考えていると、ひょこっと穴を覗き込む人がいた。
「おやまあ」
『………さっさと出して』
私を落とした犯人にそう言えば、素直に手を差し伸べてくれる。
思い切りジャンプをして、その手を掴む。すると女の子みたいに可愛い顔とは裏腹に、ぐいっと力強く引き揚げてくれる。
『………』
穴から出ると、汚れてしまった忍装束をパタパタとはたいて土を落とす。
その様子をじーーっと見られているが、無言を貫く。
「まさか、あなたがかかるとは思いませんでした」
『…………あっそ。よかったね、綾部』
「喜八郎」
『……………よかったね、喜八郎』
正直言って、とても悔しい。
私はくのたまの中でも優秀で、こんな罠にかかる事なんてほとんどない。
こんな罠にかかったのだって、下級生の時が最後だ。
「かすみ先輩」
『なによ』
「デートしましょう?」
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