ひらりと翻り
□第十夜 仲間
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「………うぅーーーん……………」
「負けるなじゃん!」
「へっへー!どう出る、ラビ?」
「やっぱり、ジョニーは強いわねぇ……」
そこは黒の教団 ・食堂の一角。
日当たりのよい窓際の席に、数人集まってワイワイ騒いでいる。
『ん?あれは………?』
少し遅めの昼食を取ろうと、食堂へやってきた。人もまばらにしかいないのに、なぜか窓際の席には人が集まっている。
ジェリーさんから大好きなカレーセットを受け取ると、そちらの方へ行ってみる事にした。
よくよく見ると、何人かは見知った顔だ。他に初めて見るエクソシストが2人。
今話しかけて大丈夫そうな人に声をかけてみた。
『リナリー!こんなに集まって、何してるの?』
「あら、仁美!今ね、チェスをやってるのよ!」
『チェス?』
人が集まっているその中心を見ると、確かにテーブルの上にはチェス盤が置かれていた。
そして対戦はジョニーとラビ。
何となく表情とかで、ジョニーが優勢なのが分かる。ラビの周りにいる人たちは、必死でラビを応援している。
「ラビ!負けるなじゃん!このままじゃ、科学班で一週間手伝いになっちまうじゃん!」
「〜〜っ!」
どうやらとんでもないものを賭けているようだ。
ジョニーとタップの科学班組は鼻歌まじりで、余裕の様子。
「ラビとデイシャは手伝い決定かな〜?」
「タップ!何を手伝ってもらおうか?」
どうやら、リナリーは中立で勝負だけ見ているようだ。というか、ほとんどはそうみたい。
邪魔にならないように、通り道を挟んだテーブルに座って、持っていたカレーセットを置く。
すると、リナリーが目の前の席に座った。
『あれ?勝負は見なくていいの?』
「大丈夫、ここからでも見えるから!」
「それなら私もゆっくり座りながら、観戦するとしようか」
そう言ってリナリーの隣に座ったのは、大柄な男性。ヘッドフォンをしており、常に目を瞑っている。
座る時、椅子を手探りで少し探しているように感じたのだが、ひょっとして見えていないのかな……?
『あの………ええと、初めまして。河野仁美と言います』
すると、とても優しい表情をこちらに向けてくれる。大柄で少し怖い印象だったが、優しい人のようだ。
「あぁ、初めまして。私はノイズ・マリだ。キミの事は噂で聞いているよ、仁美」
『マリさん、ですね。宜しくお願いします!
でも噂ってどんなのですか?ちょっと気になります』
するとマリさんはフッと大人な笑みを浮かべ、話し始める。
「ティエドール元帥から嬉しそうに言われたんだよ、娘が出来たって」
『げほっ!』
思わず飲んでいたオレンジジュースでむせてしまった。
師匠ってば相変わらず何を言ってるのよ!
「仁美、大丈夫?」
『う、うん。師匠の言動にビックリしただけ………』
「元帥はそういう人だ。早めに慣れた方が身の為だ」
笑いながらアドバイスしてくれる。
そう言えば、ノイズ・マリって名前に聞き覚えがあるかも……
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