ひらりと翻り

□第十夜 仲間
1ページ/5ページ





「………うぅーーーん……………」

「負けるなじゃん!」

「へっへー!どう出る、ラビ?」

「やっぱり、ジョニーは強いわねぇ……」


そこは黒の教団 ・食堂の一角。
日当たりのよい窓際の席に、数人集まってワイワイ騒いでいる。





『ん?あれは………?』



少し遅めの昼食を取ろうと、食堂へやってきた。人もまばらにしかいないのに、なぜか窓際の席には人が集まっている。



ジェリーさんから大好きなカレーセットを受け取ると、そちらの方へ行ってみる事にした。


よくよく見ると、何人かは見知った顔だ。他に初めて見るエクソシストが2人。
今話しかけて大丈夫そうな人に声をかけてみた。



『リナリー!こんなに集まって、何してるの?』

「あら、仁美!今ね、チェスをやってるのよ!」

『チェス?』



人が集まっているその中心を見ると、確かにテーブルの上にはチェス盤が置かれていた。
そして対戦はジョニーとラビ。


何となく表情とかで、ジョニーが優勢なのが分かる。ラビの周りにいる人たちは、必死でラビを応援している。



「ラビ!負けるなじゃん!このままじゃ、科学班で一週間手伝いになっちまうじゃん!」

「〜〜っ!」



どうやらとんでもないものを賭けているようだ。

ジョニーとタップの科学班組は鼻歌まじりで、余裕の様子。



「ラビとデイシャは手伝い決定かな〜?」

「タップ!何を手伝ってもらおうか?」



どうやら、リナリーは中立で勝負だけ見ているようだ。というか、ほとんどはそうみたい。


邪魔にならないように、通り道を挟んだテーブルに座って、持っていたカレーセットを置く。
すると、リナリーが目の前の席に座った。



『あれ?勝負は見なくていいの?』

「大丈夫、ここからでも見えるから!」

「それなら私もゆっくり座りながら、観戦するとしようか」



そう言ってリナリーの隣に座ったのは、大柄な男性。ヘッドフォンをしており、常に目を瞑っている。


座る時、椅子を手探りで少し探しているように感じたのだが、ひょっとして見えていないのかな……?



『あの………ええと、初めまして。河野仁美と言います』



すると、とても優しい表情をこちらに向けてくれる。大柄で少し怖い印象だったが、優しい人のようだ。



「あぁ、初めまして。私はノイズ・マリだ。キミの事は噂で聞いているよ、仁美」

『マリさん、ですね。宜しくお願いします!
でも噂ってどんなのですか?ちょっと気になります』



するとマリさんはフッと大人な笑みを浮かべ、話し始める。



「ティエドール元帥から嬉しそうに言われたんだよ、娘が出来たって」

『げほっ!』



思わず飲んでいたオレンジジュースでむせてしまった。
師匠ってば相変わらず何を言ってるのよ!



「仁美、大丈夫?」

『う、うん。師匠の言動にビックリしただけ………』

「元帥はそういう人だ。早めに慣れた方が身の為だ」



笑いながらアドバイスしてくれる。
そう言えば、ノイズ・マリって名前に聞き覚えがあるかも……



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ