ひらりと翻り
□第四夜 イノセンス
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…チュンチュン……チチチ……
朝が来たことを小鳥たちが告げる。窓からは朝日が射し込む。
いつの時代も朝は同じように来るんだな…
寝起きの頭でそんなことを思う。
朝起きるとお気に入りの紅茶を一杯飲む。
そんな些細な日課も、今は出来ない。
まだ覚醒しない体を起き上がらせ、服を着る。ただ自分の服ではなく、教団より支給された黒い服だ。
半袖のTシャツに膝丈のフレアースカート。そしてこれまた支給された黒いブーツを履く。
ここまで黒一色だと逆にオシャレだ。
これでシルバーのアクセなんかあれば完璧なんだけどなー、などと呑気なことを思う。
部屋の扉を開けると、まだ活動している人は少ないらしく、しんとした空気が漂う。
朝のこういう空気はとても好き。
出来れば自然の空気を吸いたくて、思いきって部屋を出て外へと向かう。
昨日の医療班での精密検査の後、教団の中をラビが色々案内してくれた。建物の中は同じような造りのため、とても分かりにくい。
とりあえず階段の場所と何階に何があるのだけは、頭に叩き込んでおいた。
そのおかげで何とか歩き回れそうだ。
1階へ行き、外に出る。表ではなく、裏の扉から出たので目の前に森が広がった。
はぁ、いい空気!気持ちいい……
だいぶ明るくなってきた森の中を散策する。
木々のさざめきと小鳥の鳴き声と自分が歩く音しかしない。
日本の朝は、どこかしらで必ず車などの騒音がしていたので、ここまで音が少ないのは初めての経験かもしれない。
しばらく歩くと、森の中に人影が見えてきた。同じように散策してるのかなと思い、人影に近づく。
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