ひらりと翻り

□第一夜 気づくとそこは……
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あぁ、今私は夢を見ている。
だって今私の目の前にいるのは、4年前に亡くなった私の家族。


両親は優しい笑顔で私に笑いかけている。

妹の汐莉は、私に飛びつく。


4年前までは日常だった光景。


嫌だな。夢だなんて気づきたくなかったな。
そうすれば幸せなままだったのに……



すると飛び付いてきた汐莉がこんな事を言う。


「お姉ちゃん。前に私があげたピアス、ちゃんとしてくれてる?」


ピアス?


「あ、ちゃんとしてくれてるね!」


あぁ、この桜のピアスの事ね。


「うん!それがあればお姉ちゃんは護られるから大丈夫だよ!」


護られる?何から?


「AKUMAから」


悪魔?


「そう、AKUMA!」


ピアスがAKUMAから私を護る?


「うん、ピアスの中にいる神様が護ってくれるのよ!」


このピアスに神様がいるの?


「うん!旧約聖書に書かれたノアの方舟の時から存在している神様よ」


ノアの方舟って……世界が大洪水で1度沈んでしまったっていう……?


「そう!欲深い人間で溢れてしまった世界を神様が嘆いて世界を大洪水で滅ぼした。神様が選んだノアとその息子たちの家族が方舟を作り、動物たちと一緒に難を逃れたお話」


うん、そのくらいなら知ってる。


「旧約聖書では、神様が世界を滅ぼしてしまったと書いてあるけど、実際は違うの」


……何が違うの?


「神様は世界を護ろうとした」


護ろうとしたの?


「そう!人間の力を借りて、護ろうとした。でも滅んでしまった」


………………


「千年伯爵のせいで滅んでしまったの」


せんねん………?


「うん。千年伯爵から世界を護ろうとした神様が、このピアスにいるの」


何だか、すごい夢物語ね?


「…そうだね。でもお姉ちゃんは見たはずだよ。千年伯爵が造り出したAKUMAを………」


あ、く、ま


「お姉ちゃん。私はずっと側にいるよ?だから、大丈夫………」


な、にが大丈夫なの……?
汐莉……




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