上級生の学年対抗実習!

□見える行動、見えない行動
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竹谷八左ヱ門・回想


今日は平和な委員会だった。毒虫たちが脱走する事もなく大人しくしているし、一年生たちも掃除中に転んで飼育小屋にぶつかったりしていない。孫兵のジュンコだって大人しく首に巻き付いている。

こんな委員会活動が続けばいいのになー……、なんて心の中でポツリと思ってしまう程、いつも何かしら騒ぎが起こってしまうのだ。


「よしよし!お前も元気だなー!」


飼っている狼の頭と首の辺りをもさもさと撫でてあげると、気持ち良さそうにぐるるるる……と喉を鳴らしている。
この狼は警戒心がとても強い為、まだ下級生たちはお世話が出来ない。三年の孫兵にはようやく慣れ始めた、といったところだ。



「ウゥ〜…………」
「おほ?どうしたー?」


突然唸り始めた狼。耳をピクピクさせているので、何かの気配を感じ取っているのだろう。すると小屋に歩きながら近づく気配を感じる。

これは、恐らく……


そして小屋の扉の辺りに、誰かが立つ気配がはっきりと感じられた。


「孫兵か。どうしたんだ?」
「竹谷先輩……相談、ではないのですが、お伺いしたい事がありまして」


顔を見れば、特に悩んでいたりといった事はないようだ。


「あぁ、分かった!一年生たちに委員会の終わりを伝えてくるから、それからでいいか?」
「はい。構いません」


よし、としゃがんでいた腰を上げて狼の頭をもう一撫でしてあげる。そして、一年生たちに委員会を終わりにする事を伝えに行ったのだった。










飼育小屋のすぐ側にある木。そこに二人で並んで座ながら話すことにした。


「それで、どうしたんだ?」
「実はここ最近、ろ組の三人が同じような違和感を感じてまして……」
「同じような違和感……?ろ組って事は、富松と神崎と次屋の三人か?」
「はい、そうです。何でも委員会活動中、四年生の様子が少しおかしいと感じる事があるみたいなんです」
「四年生の?」


……って事は、きっと課題が関係しているんだろう。委員会の中で何かをやる課題なのかもしれないな。右手を顎に当てながら、孫兵から言われた事を頭の中で考える。


「四年生の行動で、何か心当たりなどありませんか?」
「うーん、アイツらの行動ってなるとなぁ。何か実技の授業で言われたんじゃないか?」
「そうですか……、では六年生で心当たりはありますか?」
「え?六年もか?」
「はい」


孫兵からの質問に惚けながらも、孫兵の鋭い質問に心の中では驚いていた。下級生とはいえ三年生。勘の鋭い奴はすでに何かを察しているようだ。


「三年生でも感じ取っている事に、六年生が気づかないワケがありません。でもろ組の三人が言うには、六年生はその事にはまったく触れる素振りがないみたいなんです」
「あの六年生がねぇ……」


確かに孫兵の言う通り、ちょっとおかしいな。六年生は俺らと同じように学年対抗の課題の真っ最中だ。もし内容が四年生に対するものでなくても、何かしらアクションは起こすと思うんだけどな……


「竹谷先輩でもご存知なかったですか……」
「悪いな、孫兵。ただ俺も何が起こってるのか調べてみるよ」
「ありがとうございます……!」


さて、これは俺ら五年生にとってもいい情報だ。何せ四年生の動きと六年生の動きが知れたのだから。






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