上級生の学年対抗実習!

□始まりの日 四年生の場合
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その日の午後

四年生は授業がなかった為、各々でやりたい事をやっていた。滝夜叉丸は戦輪の輪子との特訓。三木ヱ門はユリコとの散歩。守一郎は火薬についての勉強。そして、タカ丸は喜八郎の髪の毛を弄っていた。


「ねぇ、綾部くんはどう思う〜?」
「何がですかー?」
「今回の実習というか課題だよ〜。滝夜叉丸くんと三木くんは本当に大丈夫なのかな〜?」
「さぁ?」
「さぁって……綾部くんてば冷たいな〜」
「だって本人達が問題ないって言ってるんですから、しばらく放っておきましょー」
「うーん、そっか……二人ともプライドが高いもんねぇ」


ふわふわと髪の毛を弄りながら、今回の課題についてタカ丸なりに考えているようだ。
午前中のやり取りで、二人が本当に大丈夫なのか心配らしい。


「タカ丸さんは出来そうですか?」
「うん!綾部くんにアドバイス貰ったしね〜!すぐは無理でも頑張るよ!」
「そうですか、よかった」


課題についてやるべき事が見えているのは、まだこの二人だけである。しかも喜八郎については早速行動を起こそうとしているようだった。


「綾部くん。どんな感じに結う?」
「んー……可愛くして欲しいんですが、少し物足りないくらいがいいでーす」
「物足りないくらい?」
「はい。ちょっとそれだけだと寂しいって思うくらいでいいです」
「ナニそれ!難しい注文だね〜!」


タカ丸は笑いながら喜八郎の難しい注文を受けている。そしてそんな喜八郎自身は薄い桜色をした可愛らしい小袖を着ていた。つまり、女装をしているのである。

タカ丸は喜八郎に頼まれて、その小袖に合う髪結いをしていたのだ。


「でもどうして急に女装をするの?」
「……上手くいったら、ちゃんと報告しますよ」


そう言いながら喜八郎は後ろを振り返り、タカ丸の事をじっと見つめる。そのいつもとは違う強い眼差しに、タカ丸も何かを感じ取ったようだ。


「あ〜、そういう事ね〜!何となく綾部くんがやろうとしてる事が分かったよ!」
「そういう事でーす」


さすが二つ年上だけあって、喜八郎がやろうとしている事を察したようだ。ニコニコしながら、注文通りに髪を結い上げていく。


「タカ丸さん。他の学年に知られてはいけないんですから、話す時は気をつけて下さいね?」
「うん、気を付けるよ!さ、出来たよ綾部くん!」
「おー、ありがとうございまーす」


手鏡を見ながら、その仕上がりに納得する。さすがは人気髪結い処で、髪結いをしていただけの事はある。
喜八郎はタカ丸にお礼を言うと、早速目的の人物の元へと向かうのだった。




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