年下の綾部くん
□僕の心のしこり
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「喜八郎。お前がウジウジしている原因はかすみだろう?」
「………!」
「かすみ先輩…………ですか?」
後輩たちはきょとんと自分達のやり取りを聞いている。三年の藤内は何となく分かっているようだが、一年の二人は分かっていないようだ。
「お前が最近、かすみにちょっかいを出していると噂が立っている。それじゃないのか?」
「……ちょっかいじゃないでーす」
「え、ちょっかいじゃないんですか?」
どうやら周りでは僕がかすみにちょっかいを出していると噂されているようだ。
藤内も僕がちょっかいを出していると思っていたようだ。
僕はかすみの負担を軽くしてあげたいだけなのに……
「かすみ先輩って、あのちょっと怖い人ですよね……?」
恐る恐る聞いてくるのは、眉根を下げた一年の伝七。兵太夫も同じような顔で、同じようにこちらを伺い見ている。
やっぱり下級生にとってかすみは、怖い人って印象のようだ。
「かすみは、怖くなんてないよ」
「うーん………確かに怖いというより、近寄り難いっていう方がしっくりきます」
「そうだな」
僕の答えに対して、藤内と立花先輩が同意してくれる。そして意味ありげな目で立花先輩が僕を見てきたのだ。
「……それに最近、かすみが少し変わった気がするな」
「え、かすみが変わった……?」
何を言い出すのかと思えば、かすみが最近変わったのだと言う。
正直なところ何かが変わったようには見えなかったけど、立花先輩には分かるというのだろうか。
先輩の話を聞いて、後輩三人もきょとんとしている。
「かすみ先輩が変わった………?兵太夫は気づいた?」
「いや、変わったかどうかなんて分からないよ」
「僕も特に変わったようには見えないですが、何が変わったんですか?」
僕が聞きたかった事を後輩たちが質問する。
すると立花先輩は、少し含みを持ってクスクス笑っていた。
「見た目は変わらないさ。変わったのは空気だ」
「空気??」
「そう。かすみの纏う空気が、最近柔らかくなった気がするのさ」
かすみの纏う空気が柔らかくなった……?
僕では分からないものを立花先輩は感じ取っている、という事なのかな。さすが六年生………
「かすみは良い方向に変わっているのに、それに関わったお前が何故ウジウジ悩んでいるんだ?」
「……それは…………」
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