お姫様と天化の事情
□第1話 木に成る人
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四不象がそのまま空へ飛んでいき、辺りはとても静かになりました。
発兄様がいなくなると、こんなにも静かになってしまうんですね。
「何だったんさ……」
『お見苦しいところをお見せしました、発兄様はよく逃げ出してしまうので……』
「師叔とは面識があるんさね?」
『はい、発兄様を捕まえるのに、よくお手伝いをしますから』
そう言うと天化様は笑い出しました。
いつも遠くでしか見ることが出来なかったこの笑顔を、今は間近で見ています。
何より助けてもらい、少しの間お話が出来ただけでも幸せです。
「でも今回はあーたを探しに来たんさね?」
『うーん、どうでしょうか?』
「きっと、そうさ!可愛い妹を探しに来たんさ」
『………はい!』
何だか、そう言われるととても嬉しいです。
いけないことですが、軍義よりも私を優先してくれたのでしょうか?
「じゃ、また王サマが探しに来る前に、帰るさ!」
『はい!』
いつもはとても手を焼かされる発兄様。でも今回ばかりは感謝です。
だって話すことは叶わないと思っていた天化様と、ここまでお話が出来たのですから!
私が住む屋敷までの短い距離を、ゆっくり歩きながら一緒に帰るのでした。
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