お姫様と天化の事情
□第1話 木に成る人
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「……あーた、何やってるさ?」
最初に声をかけられたのは、ちょっと引き気味の声でした。
独特の言葉使い。くわえっぱなしの煙草。素肌の上に直接羽織るジャケット。
いつも少し遠くから見ていた人が、目の前にいます。ただ、何もこんな状況じゃなくてもいいのに、神様はとてもいじわるです。
『えっと……遠くの景色を見ようと思ってたら、足を滑らせました!』
「…………あぁ、そーかい」
ちにみに今の状況とは、高さ3mくらいの木の上で、宙吊り状態です。
上手い具合に、服の襟部分が木の枝に引っ掛かってます。
「で?俺っちはやっぱり、助けた方がいいんさ?」
『出来れば、そうして頂きたいですね』
実は、この状態で3時間くらいぶら下がったままなのです。
さすがに辛いなぁと思っていたところです。
「まったく……しゃぁないさっ!」
彼はそのまま地面を蹴り上げ、3mの高さのジャンプを軽々としてしまいました。
枝に引っ掛かった私を抱え、いわゆるお姫様抱っこの状態で救って下さいました。
「よっ…と」
私の重さなんて何も感じていないように、キレイな着地でした。
やはり道士様の中でも、戦士タイプだからなのでしょうか?
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