お姫様と天化の事情

□第14話 やってきた試練
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周の豊邑から進軍を始めて、約半年……
今俺っちたちは殷の関所をいくつも抜け、残すはメンチ城を抜けるところまでやってきていたさ。


「朝歌か、久しぶりよのぅ……あの時、妲己にズタボロにやられて以来か……」
「今度は勝てるッスかねぇ……」
「勝ぁーーーつ!」


空を飛ぶ師叔が、らしくもなく気合いを入れているところを見ても、ここを越えるのは大きな山場のようさ。

そんな事を考えていると、前を行く王サマが農民の娘にちょっかいをかけようとしているではないか。

……本当に、こんな人が王サマでいいんさ……?

呆れながら王サマの様子を眺めていると、どうやら思っているように事は運ばなかったようだ。
その農民の娘が着ている服をパッと脱ぎ払ったかと思うや、ド派手な衣装に早変わりをしたさ!


「じゃーん!わらわに触れられるのは、紂王さまだけよん♡」

「「妲己!!?」」

そして近くにいる楊ゼンさんをチラリと見やりながら、今回は変化ではない事を確認する。

「今度は本物さ!!」
「…………」

「うわぉ!想像以上の超ド級のプリンちゃん!」
「ここまで来た甲斐があったぜ!」


はぁ? はあぁぁ〜〜っ!?
ざけんなっ!コイツらっ!いくら藍季のアニキだからって許せないさっ!


「何言うさこのモグラっ!この王サマっ!!」
「ハニーのバカバカっ!」
「とのっ!あいつは最悪の敵なのですぞっ!」
「あー!王なのにーー……」


俺っちと蟬玉と南宮カツで、何も分かっていないバカな女好き二人を足蹴にする。何で敵の親玉の事を分かってないんさっ!


「あらん?太公望ちゃんはどっこぉん?せっかくおどかそうと農民になったのにん♡」
「妲己…………」
「太公望ちゃん♡」
「………何のつもりだ?」
「あはん♡この間はうちの太子がお世話になったそうじゃないん♡そのお礼を言いにねん」


師叔が妲己を引き付けている間に、俺っちたちは後ろへと回り込む。
こいつはおふくろと叔母さんの敵だ!ぜってぇ逃がしてたまるかっ!


「それともう一つ……あなたたちがどのくらい強くなったか確認しておきたくてねん」
「いけない!君たちは早く遠くへ!」


楊ゼンさんが冷静に周りにいる一般兵たちを逃がしていく。
よし、思いっきり暴れていいさねっ!





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