TEXT/ドラゴンボール

□第6話
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◇◆◇

時と所変わって、時空の展望台。


(このまま、行くあてもなく野垂れ死ぬか…。
それとも、得体の知れんヤツの弟子とやらになってみるか…)

いや、野垂れ死ぬことはないか?
戦闘民族であるサイヤ人ならば、賞金稼ぎで食っていくことも出来なくはないはずだ。

バーダックは、しかし、自分がその選択肢に対してあまりやる気がないことも感じていた。
目の前の銀髪は、相変わらずこちらをまっすぐ見つめている。
何を考えているのか分からない。
だが、自分が何をしたいかは、なんとなく理解している。

おかしい。
何かがおかしい。
この理解には、何か違和感がある。
コイツに従ったところで、何のメリットもないのに。

仲間の仇が取れるわけでもないのに。

(何なんだよ、チクショウ!クソったれ!)

…俺は、この銀髪の弟子になろうと思っている。

軽い気持ちで、というわけではない。
きっと、多分、本気だ。
一度首を縦に振れば、俺はクソ真面目にトレーニングに励むだろう。
それで、いつかはコイツの立場とか仕事を引き継ぐのだ。

そこまで想像してみて、まんざらでもないと考える自分が腹立たしい。

(だぁー、クソ、ダメだ!)

頭をひねるのは苦手だ。
拳を振るい、返り血を浴びるほうが性にあっている。
知能が劣るのは、戦いに特化した生物の宿命だ。
当然、自分にも当てはまる。

(…だったら)

自分の心に従ってやる。
未来のことをあれこれ妄想するのは止めだ。
ロクに回らない頭で何を思いついたところで、当たるわけでもない。
なら、コイツの思惑に乗ってやろうじゃないか。

変な違和感が消える。
気のせいだったのだ。
ああ、そうに違いない。

この銀髪の言うとおりになるのは少し気に障るが、この際、どうでもいい。
考えるのが面倒だ。

バーダックは、遂に、決意を固めた。

「なってやるよ…てめぇの弟子に。シャクだがな、クソったれ!」

銀髪が笑みをたたえる。

「ええ。そう言ってくれると知ってましたよ」

何が「知ってました」だ。
やっぱり、俺はコイツが気に入らない。

「じゃ、改めて。私は運命の界王神です。
たった今から、私が君の師匠です。よろしく」

「バーダックだ、クソったれ」

とりあえず、バーダック差し出された手を全力で握り返した。
銀髪の神が表情を1ミリも崩さなかったのは、言うまでもない。
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