TEXT/ドラゴンボール

□第8話
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◇◆◇

小さな気を頼りに、エースが向かった先にいたのは、バーダックだった。
正確に言えば、彼は傷だらけになり、全身から血を吹いて倒れていた。
衣服もボロボロだったが、その意匠には見覚えがあった。
界王神様が着る服とそっくりだったのだ。
色は、老界王神様の着ているものに似ていた。

老界王神様は、慢性的な人手不足の時の巣で、最近サポートしてくれるようになった神様だ。
なんでも、15代前の第7宇宙の界王神様だったらしい。
その時も、時の界王神様の隣にいて、真っ先にバーダックの保護を進言した。

「何固まっとるんじゃエース、さっさと連れて戻ってこい!
このままじゃと手遅れになるぞい!」
「! は、はい!」

バーダックはその後、一度も目覚めていない。
医療用ロボットが、目を覚ましたと報告した時も、駆けつける前にまた意識を失ってしまったし…。
時の界王神様からは待機命令が出ているので、修行にも行けないし。
結局、暇を持て余してバーダックの様子を見に行くと、やっぱり眠ったままである。

トランクスはというと、どうやら時の界王神様から別の仕事を頼まれて、トキトキ都を離れているらしい。
休暇ではなかったのは、後から聞いた。
どうやらサプライズにするつもりだったようだが、今回はそうも言ってられない。
バーダックが目覚めたら呼び戻すみたいなので、ここ数日は、彼と顔を合わせていないことになる。

(…退屈だなぁ)

まだパラレルクエストは山のように残っている。
が、待機命令が出ているためトキトキ都の外には出られない。
仕事を手伝おうかと思って界王神様達に声をかけようにも、首を突っ込めそうな雰囲気でもなかった。
どうやら、先ほど見たバーダックの夢について話し合っている様子だった。
時の界王神様が言っていた「心当たり」は、どうやら自分のような人間が知ることのできないもののようだ。

とまあ、このように特にやることもないので、空を飛んで気を紛らわしているところだ。

と、ここで一つ思いつく。

(…あ、刻蔵庫。最近行ってないよな)

トキトキ都は現在夜で、パトロール隊員は一部を除いて寝ている時間帯である。
そのため、眼下は静まり返り、ただエースの風をきる音が広い空間にこだますばかり。
つまり今のところ、誰も刻蔵庫に近づいてはいないはずだ。

(すぐに戻ってこれば…大丈夫、だよね……)

ちょっとした好奇心と不安を半分ずつ抱えながら、エースは時の巣へとつながるゲートをくぐった。

夜はまだ長い。
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