TEXT/ドラゴンボール
□第5話
1ページ/2ページ
トランクスは、久しぶりの故郷を眺めていた。
自分がここを離れる前は、まだ家々の庭に瓦礫がたまり、道路も砂だらけであった。
しかし、実家のカプセルコーポレーションが近くにあるためか、この近辺は復興がだいぶ進んでいる。
まだ再建中の家はあるものの、瓦礫は撤去され、道路はすっかりきれいになっている。
よく見ると、ひび割れている道路に緑がちらほら見えた。
そして何より、人々に笑顔が戻っている。
トランクスはそれが嬉しかった。
青い風が頬をかすめる。
トランクスは、故郷へ帰って来たという事実を噛み締めていた。
状況が状況でなければ、もっと気持ちよく帰れていただろうが。
『トランクス、ちょっと頼みごとがあるの』
時の界王神はそう告げた。
休暇を取らせるとか言っておいて、仕事を押し付けた。
いやまあ、元々は歴史を改変した罰なので、別に抗議はしない。
むしろ、名目上でも休暇をくれたことに対して、トランクスは驚いている。
「まさか、時の界王神様があんなことを言うとはなぁ」
◇◆◇
時を遡ること、数分前。
「トランクスの実家って、確か『カプセルコーポレーション』とかいう、工業系の会社だったわね?」
「え、ええ、そうですが」
「よし、今から休暇をあげるわ!実家に帰りなさい、トランクス!」
「…え?…………ぇぇぇえええええ!?」
いきなり急に何を言い出すんだこの神様は!!
開いた口が塞がらないトランクスをよそに、彼女は言葉を続けた。
「新人のパトロール隊員も増えたし、ちょっと手狭になって来たのよねー、トキトキ都。
ドミグラの事件も終わって、落ち着き始めたから、ちょうど良かったわ」
「あの、それとこれと、どういう関係が…?」
「トランクス、ちょっと頼みごとがあるの」
そう言うと、時の界王神はどこからか書類の束を取り出して見せた。
様々な建物の図面が描かれているものがほとんどを占めている。
「界王神様、これは一体…」
「リニューアルトキトキ都(仮)のデザイン図よ。
前々から拡張しようと考えてたところだったの」
トランクスはハッと気づいた。
このデザイン図にある建物を、カプセルコーポレーションに作らせようとしているのか、と。
まさか、休暇という名目でその依頼を自分にさせるということなのか。
「そこでね、その工事をカプセルコーポレーションに依頼しようと思うの」
予想は見事に的中した。
「…つまり、俺にその手続きをしろ、というこ…」
「話が早くて助かるわ!
そうと決まったら、早速行ってちょうだい!善は急げ、よ!」
「あ、あのまだ仕事が!」
「そんなの休暇が終わってからでいいわ!
はい、これあなたの荷物ね!」
トランクスの意思などお構いなく、トントンと話が決まってゆく。
気がつけば、西の都の外れにある丘に立っていた。
傍らには、旅行カバンと書類ケースが置かれている。
(ま、いっか…)
トランクスは、故郷の空を仰いだ。