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prologue



それはほんとに不思議な体験だった―――



ゆらゆら、ふわふわ、つめたくて、でもあったかくて

さっきまでいた海の中とはまた違う。

でも、なんだか懐かしいようなそんな気がした。




気が付くと、見知らぬ浜辺に打ち上げられていた。

目線の先には緑が生い茂っていて、いつも見ている海の景色とは違っていた。

確か私は、お友達とおひさまを見に海上に上がったはずなのに
それなのにどうしてこんなところにいるのだろう?


自分の身に起きた不思議な変化が全く頭に入ってこない




私はハっとして、緑が生い茂っている森のような場所へひた走り
はだしのまま森に入っていった

人の声が聞こえた気がしたからである。



全く知らない場所に流れ着いていて不安な中自分がもう、頼れるのは
聞こえた小さな小さな声だけだから


固い土と、石、木の枝が肌を裂いていくけれど、ななしのは気にも留めず走り続けた。
やっとの思いで小さな声の主の影を見つけた。





「あのー、だれかいますか?」


「誰だ!出てこいっ」





お願いします。この声の主がやさしい人でありますように…。

念じるようにヒョコッと木の間から顔をのぞかせると

暗い森の中に、そこにいたのは、黒いウェーブのかかった髪にそばかすの男の子。

体の大きさを見る限り私より年上の子。




「お前、ここら辺では見ないやつだな」




そばかすの少年は不思議そうにこっちを凝視しながら言った。

緊張して体を固くしていた私にその少年は私の方へ寄ってきて
手を差し伸べてくれた。



「お前けがしてるのか」



「え?あ。」




素足で走ったためにできたたくさんの傷
子供の足には違和感の残るそれ




「こいよ、手当てしてやるよ」




きたねぇ小屋でわりーけど
と言いながら、私の右手をつかんで裏山に続く獣道をかき分けて進んでいく。









私はこの少年の存在に救われたのだ。
 

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