誰ガ為ノ世界(謎のプリンス)

□交差する想い
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夏休みに入り、数日が経ち、ストレンジはダンブルドアに呼ばれた。
失礼しますと言いながら校長室に入ると、顔色が悪い校長がデスクに座っていた。
見ると左手が黒に変色していた。
側には焦げた指輪が転がっている。
「来たかの、ストレンジ?」
「呼ばれたからな。……その手は、指輪を破壊した代償か」
ダンブルドアは左様と頷いた。
例のあの人を倒す分霊箱のひとつである、ゴーントの指輪をダンブルドアは破壊したらしい。
だが手が変色するという代償が付いて回った。
いや、ただの変色だけという訳ではないだろうな、とストレンジは思案する。
確実に命を蝕む、という効果もあるのだろう。
ダンブルドアは弱々しく微笑を浮かべながら、ストレンジに言った。
「まぁ、その通りじゃ。老い先短い、儂の願いを聞いてはくれないかの」
「自分の事を老い先短いとか言うなよ。
命って言うのは……」
「お主の本業は医者じゃったな。すまんすまん。
今は説教は勘弁じゃ」
じゃあ何で言ったんだよと、ストレンジは思ったが、中々話に入る事が出来なそうなので黙っている事にした。
ダンブルドアは表情を引き締め。
「儂の生徒である、ドラコ・マルフォイの父親が、アズカバンに入れられている事は知っておるな」
「ああ。日刊予言者新聞の方でも話題だよ。それが?」
「死喰い人で予言を奪うという任を、任された男がアズカバンに入れられたのじゃ。
ヴォルデモートはその汚名を挽回するチャンスを、そのルシウスの息子であるドラコに与えるはずじゃ」
ストレンジはそれがどうしたと思う。
人様の事情などに首を突っ込む程、ストレンジは優しくはない。
その考えが表に出ていたのか、ダンブルドアは言葉を続けた。
「ヴォルデモートはそれを好機だと思い、きっとドラコに儂を殺ろすよう命じるはずじゃ。
儂は生徒を人殺しにはさせたくない」
「……死喰い人である父親が、任務に失敗して投獄されたんだろう?
その名誉挽回のチャンスを命じられるのは、当たり前だと思うが。
俺には関係無い。人殺しになるのは自業自得、だ」
人殺しになるのは自業自得、その言葉をストレンジはほとんど自分に言い聞かせる様に呟いた。
ダンブルドアにヴォルデモートの側で動向を探れと言われ、死喰い人に自分は入った。
仮の死喰い人ではあるが。
そこでヴォルデモートに人を殺せと命じられた時は、迷いなく殺せた。
……俺はすでに人殺しだ。
アズカバンに入っていてもおかしくないのに、ダンブルドアの口添えでのうのうと自分はまだホグワーツにいる。
ストレンジはぎゅっと拳を握った後に、言葉を発した。
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