それは4月に雪が降るかの如く
□迎い
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ユイがベイカー街に住み始めて、2ヶ月は経とうとしていた。
慣れない海外生活も、ジョンやジャニーン、何よりハドソンの手伝いもあってようやく慣れ始めた。
最初拙かった英語も、日常生活に必要なくらいは喋れる様にはなってきていた。
ここに来る前は、少し英語も勉強してはいたので英語を覚える事はそこまで苦ではなかった。
「そういえば、シャーロックに貴方の事話したの?」
ある日の昼下がり、ジャニーンが唐突にユイに問い掛けてきた。
場所は、ユイの部屋で、2人はテーブルを挟んで向かい合う形で座っていた。
「えっと……」
「もう2ヶ月は経つんだし、そろそろ私にだけでも教えてくれない?」
ニッコリと安心させる様に笑うジャニーンに、ユイは言った。
「あ、じゃあ……。
私には、母がいるんです」
「うん」
「母がいるんですけど、すぐに何かと怒る人で……。私が悪い時は、仕方ないとは思うんですけどそうでない時も、何かと理由を付けては怒って来て……」
ユイは、一旦言葉を区切ってから続ける。