それは4月に雪が降るかの如く

□過去のキズ 2
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“シャーロック・ホームズは化け物”


−−うるさい。


“シャーロック・ホームズに近寄らない方がいい”


−−僕だってお前達に近付きたくもない。


“全て見透かされるぞ、あいつは残酷な事をも平気で言う怪物だから”


−−もうほっといてくれ!!


大学内でそんな噂が立ち、僕は正直気が滅入っていた。


僕に近づく者は、大抵お零れ預かりたい下卑た奴等ばかりだ。


そんなある日の午後の昼下がりの出来事だった。


校庭のベンチで1人、特に何をするでも無くただ座っていると1人の女性が僕の前に立っていた。


茶髪でウェーブ掛かった髪を腰まで伸ばした、黒い瞳を持つ可愛らしい女性だった。


「ね、隣いいかな?」


僕達の間を、柔らかな春の風が優しく通り抜けた。
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