炎のゴブレット

□第7話
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ハリーが出て行った後、ユイは先程の出来事について考えていた。
ハリーに告白されかけた事だ。
可笑しいと思われるかもしれないが、この世界に来る前の現実では大人であったため、ハリーをどうしても異性として見れないのだ。
もし自分が、ハリー達と同じ時代に生きていたらきっと自分はハリーの告白とやらを受け入れていただろう。
我ながら残酷ではあると理解してはいるが……。
ふと、自分はこの先どうなるのだろう? とユイは考えた。
そこまで考えたところで、バグマンから自分の名前が呼ばれた。


テントを出て、洞窟を歩くと眩しい陽光が自分を照らした。
会場は、円形になっておりそこに観客席が並べられて、皆んながユイを見下ろしていた。
金の卵は、ゴツゴツとした岩の少し拓けた場所にあった。
「最後の選手、ミス・ヤマブキの登場だ!」
バグマンの声が響き、拍手が鳴り響く。
「頑張れ!」、「卵を取れ!」などといった声援が聞こえてき、ユイは勇気を奮い立たせた。
ユイが洞窟から1歩を踏み出した時、金の卵の前に赤み掛かった金色のドラゴンが舞い降りた。
黒い双眸で、こちらをじっと見下ろした後に、ドラゴンは口を開いた。
「貴様が俺の相手か」
「は?」
ドラゴンが喋ったのだ。
「え? 貴方、喋れるの?」
「お前こそ俺の言葉が分かるのか?」
そこでようやくユイは、周りの会場が静まっている事に気が付いた。
周りはひそひそと何かを囁いていた。
それは、ユイの耳にも聞こえた。
「ユイがドラゴンと話してるわ」
「ドラゴンと話せるなんて蛇語を話せるくらいに、有り得ないぞ」
「やっぱり頭がおかしいっていう噂は本当だったんだ」
などと言った有り難くない話ばかりだった。
魔法のある世界で、動物と話せるだけで珍しいや変人扱いされるのは本当にこの世界だけではないのだろうか?
半ば本気でユイはそう思った。
「小娘よ、俺の言葉が分かるのかと聞いている」
「分かるわよ。おかげで今、頭のおかしい子認定されているのが分かるでしょう?」
半ばヤケクソ気味に言うユイに対して、ドラゴンは会場を見回した。
長い首に付いている頑丈な鎖がジャラジャラと音を立てる。
「確かに、お前は頭のおかしい奴と認定されているな」
「言わないで下さい。傷付きますから」
それにこのドラゴン、腹が立つ程に低音な良い声をしていた。
「ミス・ヤマブキ、試合はいつ再開するのかね?」
いつまで経ってもドラゴンと会話をし、試合をしようとしないユイに業を煮やしたバグマンが少し苛立ち気味に言ってきた。
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