炎のゴブレット

□第6話
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試合が始まり、セドリック、フラー、クラム、ハリー、そして最後にユイが挑む事になった。
セドリックがテントから出て行った後、中は緊張で包まれていた。
ユイは、ハリーの隣に腰を下ろした。
「緊張してる?」
「ううん、全然」
ハリーは、ユイの答えに曖昧に笑った。
「ユイは強いんだね」
「全然って言っても、本当は怖いよ。
でも怖いって言ったら、余計に怖くなっちゃうし」
外から、セドリックが金の卵を取ったというバグマンの解説が聞こえてきた。
「では、ミス・デラクール!」
フラーは、震えながらも背筋を代表選手らしく伸ばしてテントから出て行った。
「フラー、震えてたな」
「そうだね」
「ユイがここに来る前、フラーがすっごい君の事を悪く言ってたよ」
嘘!? とハリーを見た。
「嘘じゃないよ。あんな未成年魔法使いの小娘に出来る訳ない、ドラゴン相手に食べられてお仕舞いだって」
ハリーは、クスクスと笑いながら言った。
「いや、笑い事じゃないでしょ!
あのフラーめ! 絶対見返してやるで!」
立ち上がって宣言した時に、セドリックやクラムに変な目で見られた。
ごめんて。
ちょうどその時、クラムが呼ばれた。


「君達、仲が良いんだね」
セドリックがハリー達の所にやって来た。
「同じ寮だし当然ですよ、ね、ハリー」
「う、うん……。同じ寮だから、はははは……」
どこか力無く笑うハリーに、セドリックは苦笑いをした。
「あ、ところでハリー。昨日は、ドラゴンについて教えてくれてありがとう」
「同じ選手だから当然ですよ。
怪我をしない様、頑張って下さい」
「では、次、ミスター・ディゴリー!」
セドリックは、2人に手を振った後テントから出て行った。


テントの中には、ハリーとユイだけが残された。
「ユイ」
「何?」
「君には、好きな人はいる?」
ユイは、キョトンとハリーを見た。
そして、ハハッと笑った。
「ちょっとハリー、何言ってんの?
試合を前にして変になっちゃった?」
「変じゃないよ。真面目な話だよ」
それを聞いて、ユイの表情が変わった。
いつものハリー達と変わらない子供の様な表情が、大人っぽい表情に変わり……。
ハリーは、これが本当にあのユイと同一人物なのか疑った。
「ハリー、私は貴方の気持ちは受け取れない」
「で、でも僕は」
ハリーが言い掛けた時、ユイの表情がいつもの子供っぽいあどけない表情に戻った。
「ハリー、貴方もしかして危険な事を前にして好きな人に告白するっていう事に憧れてるの?」
そう言って、ユイはクスクスと笑った。
「いや、僕は君が……」
ちょうどそこで、ハリーの名前が呼ばれた。
「ほら行きなよ、君の番だよ」
ハリーは、ユイに掛ける言葉が見つからずに、テントから出た。
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