夢現な眠り
□5話
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立派そうな装飾品が廊下に並んでいる。屋敷かな……?
間取り図も何も待ってない私にどうしろと! 彷徨えって?
うわーん、こんな所で野垂れ死にたくないよー。
「あっ!! 起きたんですね…!」
「……ほへっ??」
何とも間抜けな声だろう。
可愛らしい声が聞こえ、振り返ると──。
こ、こ、こ、小森ユイー!!?
なんで此処にいんの!? ……ん? 待って待って……。
エレンちゃんの中で方程式が出来あがったぞ。
小森ユイが此処にいる→立派な屋敷は逆巻家→私オワタ☆
ここが敵の領地だと理解した瞬間に、一気に血の気が引く。じゃあ、あの時に『私』がなんかしちゃったのか!?
なにしたんだよ『私』!! 何をどうやったら拷問部屋入れられんだよ!!
(※蹴り飛ばしました)
つかさ!! この世界に来ちゃった以上、前みたいに平凡かつ穏和に人生を送るのが生涯の目標なのに!!
こんなとこであいつらに血を吸われて「あっ……!」って赤面してる場合じゃないんだってば!!!
「えっと……」
はっ、ユイちゃんが困惑してる。
いかんいかん。怒りで自分の世界に浸り過ぎた。
出来ればもっと現実逃避していたいけど。
「なんでもないです。とりあえず、出口は何処にあります?」
「んっと、まずリビングに行きませんか? アヤトくんたちがいるので……」
うへっ、ユイちゃんでさえ出口教えてくれないなんて辛い。
アヤトねぇ〜。
同姓同名だと良いなー。(現実逃避)
明らかに嫌そうな顔をするのを見られ、ユイちゃんは苦笑いをする。
「あはは……。気持ちは解らなくもないですけど、今外に出ちゃったらアヤトくんたち怒って大変なことになっちゃいますよ?」
「仰る通りでございますです。是非ともリビングへ連れて行ってくださいです」
我ながらよく出来た土下座。そうしてユイちゃんにリビングに案内してもらう。
憂鬱だなっ。
そして、ついに……。ユイちゃんに背を押されるがまま、リビングへ入ってしまったのだ。