夢現な眠り
□4話
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NO side
「煩わしい音ですね。うるさいです」
ジト目でライトを睨みながらクマのぬいぐるみを抱えるカナト。
その後ろから、不機嫌そうな顔でアヤトは歩いてきた。だが、エレンの顔を見た瞬間に驚きで目を見開く。
その二人の背後では、顔を逸らしているスバル。あまりこの状況に興味がなさそうだ。
「んふっ。これで四対一になっちゃったね?」
「やっぱりオマエ……」
ライトは囲む腕を解放し、ポケットに両手を突っ込んだ。少女は壁を背に、じりじりと横に移動していく。
それを見たアヤトは何かを言いたげな不満顔を晒し、後ずさるエレンの肩に手を伸ばした。
──再び彼女の瞳が様々な色で侵蝕されているのにも気付かずに。
もう手が触れそうだった時、接触を屈んで避けながら出した少女の裏拳が、アヤトの端麗な顔に食い込み、鈍い音がした。
思いのほか深くヒットしたらしく、アヤトは後ろによろめく。
「わ〜お」
横では当事者以外の三人が息を呑んだ音が聞こえた。
「…ってぇ……」
血で滲んだ口を拭う彼が纏う雰囲気は、最初よりも悪くなっているのは明らかだ。
より一層邪険な雰囲気を醸し出すアヤトを見兼ねたスバルは「おいおい、ここは学校だ──」と制止するが、そんなのはどうでもいいと言うような表情で彼は相手にしない。
「…オマエら、オレ様の邪魔すんじゃねぇよ」
「あ〜……キレちゃったー。」
「早く片付けてくださいよ」
他人事のように笑うライトと、興味がまるでない様子のカナトはテディを強く抱きしめる。共通しているのは、両者共にスイッチが入ったアヤトを止める選択肢はないらしい。
「……ふん」
スバルはもう傍観者になってしまった。
「今決めた。オマエの血はこのオレ様が吸い尽くしてやる」
怒りを募らせた目で見据えられ、彼女は口角を上げた。
「……やれるものなら、な」