夢現な眠り
□4話
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NO side
風を切る音が、今まで無音だった空間に鳴る。
固く握っていたカヤの拳が、ライトの手に収められていた。人外でなければ対応できなかった程、とてつもない速さだ。
「カヤちゃん、お淑やかそうなのに案外血の気が多いのかな〜? そんなとこも可愛いねぇ」
余裕綽々と、カヤの手を握りながら彼女を口説くライト。まるで自分は敵でもないような態度が癪に障ったのか、彼女は返答の代わりに薄く微笑みながら上手く回転し、腕の関節を押さえつけた。
身動きを封じたものの、ライトは全く笑みを崩さない。
「女の子にこんなコトさせられると興奮しちゃうな」
カヤは「ご冗談を」と冷たく言い放ち、相手にしていない。むしろ押さえつける力が強まった。
「でもさァ」
突如肩に大きな衝撃が襲い、驚くよりも先に、体が壁に打ち付けられた。
「くっ…!」
肩を押さえ、不快感に眉を寄せる。瞬間移動で技から逃げ、思い切り肩を押されて反撃されたのだ。
背中を強打した所為で息がぐっと詰まるが、すぐに目の前に視線を上げた。
その瞬間。
「!!」
鈍い音が耳の間近で鳴った。
壁に穴が出来るほど強く殴ったであろうライトの腕が、視界に入る。少し焦りの表情が彼女の顔から垣間見えた。
「ボクもいじめたくなっちゃった」
これからどうしようと模索しようとするが、ライトの後方から足音が聞こえ、これからのことに身構えるのと同時に、瞬時に意識を切り替えた。
(っ、そ…んな……!!)
……いや、"意識が切り替えられてしまった"のだ。