夢現な眠り

□1話
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NO side





「ふんふふーん♪らららー♪」
佐倉エレンはノリノリな表情で、時々ターンをしながら踊るように廊下を歩いていた。耳にはめているイヤホンのコードが、その度に揺れ動く。

度々驚きで振り返る人もいれば、慣れたような顔で素通りする人も様々。


「ピアノ〜ふんふふーん♪……わぎゃっ!!!」

周りの様子など気にも留めてないエレンは、ピアノを弾こうと音楽室に立ち寄ったが、何かに躓き、間抜けな声が口から漏れる。

転んだ原因を見ると、そこには床に横たわっている金髪の美青年。わお、こんなところにイケメンがいる。

「ごめんね。イケメンくん!!」
眠っているらしく、聞こえないとは思ったが、一応謝罪を口にし音楽室を後にした。
寝ている人がいるんだからピアノを弾くのは、やめておこう──という少しの気遣いを持って。


「んも〜。これからラスサビだったのに歌い逃しちゃった」と廊下でぶつぶつ文句を垂らすエレン。

ドアが閉まると、音楽室に寝てたイケメンくん…逆巻シュウがうっすらと目を開き、そしてまた眠りに落ちたのだった。







「うっは〜! 実に充実した時間だった〜♪……え? もう交替?」

夜道で独り言を呟くエレン。周りからしたら不気味な光景だが、幸いな事に彼女一人だけだ。

暫く虚ろになっていたエレンの瞳が徐々に澄んでいくと、エレンはくらっとよろめき、木に寄り掛かった。

「…頭痛い。だるい」
先程は元気な声だったのが、今度はげんなりしてる声色で、別人の様に態度もまったく違う。



──彼女は四つの人格を持つ秘密を持っていた。
症状に気付いたときはいつだっただろうか。無論、エレンから会話する事はまったく出来ない。でも顔もカタチも分からないが、幼い頃から彼女に寄り添う四人に娯楽を感じ、ほっと安心する。


その思考が正しいのかは解らない。

前の世界では、『これは病気だ、正気になれ』と他人に後ろ指さされようとも、エレンはそこから目を背け楽しく笑っていた。



「アオイのヤツ、学校で何かやらかしてないわよね?」
「心配でならないわ…」と呟きながら、エレンは闇の中へ溶け込んでいった──。
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