short story
□感化されたなら
1ページ/1ページ
「あらためまして皆さん、聖隷ビエンフーでフ〜!よろしくお願いしまフね〜♪ちなみにボクの聖隷ランクは"A"でフ!」
そう高らかに自己紹介をするビエンフーは自分のランクに自信があるのか"A"を強調し答える。
「ライフィセット、同じAランク同士仲よくしようでフね〜」
「聖隷ランク......僕はAランクなんだ」
「不思議はない。見かけによらず、なかなか力があるからな。アイゼン、お前もAランクなんだろう」
「らしいな。だが、聖寮が俺たちを使役するために決めた胸クソ悪い物差しにすぎん」
「そういうものか」
アイゼンの言葉をいまいち理解できてないのかそうロクロウは呟く。
「あなただって剣の実力を勝手に測られて決めつけられたら嫌でしょ?」
「それは、ムカつくな」
「例え話だから"それ"はしまってちょうだい」
剣に関して敏感に反応するロクロウは今にも斬りかかってきそうなためシャロンはそれを指摘する。ロクロウはすまんと一言いうと刀をようやくしまった。
「ごめん......」
「いや、いい。ただ、自分の価値を、他人の物差しに任せて喜ぶような男にはなるんじゃないぞ」
「うん、わかった」
流石、兄貴分といったところか、アイゼンの言葉にライフィセットは素直に頷く。だが、それは同時にビエンフーの考えを否定したこととなる。
「ビエーン!ボクのよりどころ全否定でフか〜?」
「海賊や業魔の言うことなど気にするでない。お主は儂にとって"特別なエーキュー"じゃよ」
「特別なA級!?」
嘆くビエンフーに珍しいことに、マギルゥが助け舟を出す。
(なんやかんや言って自分の使役する聖隷に対しては優しいのかしら...?)
「感激でフ〜!マギルゥ姐さん、そんな優しい言葉をかけてくれる人になったんでフね〜!」
「昔から変わらぬぞ。主が"永久"に儂のしもべであることはの〜♪」
「そっちのエーキューでフか〜!?そーバーッド!」
(...あぁ、マギルゥはそういう人間だったわ、でも......)
嘲り、下部と言いつつも、マギルゥからは一方的な感情の押し付けは感じられない。その証拠にビエンフーは意志を封じられず、感情をあらわにしている。他の者では分からない信頼関係を結んでいるのだろう。
「緊張感がないヤツが、また増えたわね......」
「...そうね。でも、ベルベットには丁度いいんじゃない」
「どういう意味よ...?」
「張り詰めすぎても仕方ないってことよ」
「...あんたたちが緩みすぎなのよ」
少し押し黙りつつ、そう答えるベルベットは背を向け先へと進んで行ってしまった。
(...緩みすぎ、ね。それは余裕がないと言ってるようなものだわ......)
復讐に囚われたベルベットは人として生きることをやめたのか、あるいは、業魔として生きることを決めたのか......どちらにせよ、ベルベットの進む道は変わらない。
(だとしても、ここがあなたの居場所となれば、あなたの笑顔が見れるのかしら......)
この先どうなるかは分からない。
ベルベットは意志を封じられた聖隷ではないのだから_____。