暁のヨナ

□恋の怪我
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センの第一印象は他の珍獣に比べておとなしいと思った。
まぁ、ゼノ以外はもう一人の龍がいる事に驚いていた。その名は【黒龍】。

でも、俺は第一印象を忘れていた。
なぜなら、彼女がよく怪我をしているからだ。
そう、今日も。

「だから、何でこんなに怪我をしてるの? セン。」

「ん〜。何でだろうね。」

センは何事も無かったように笑っていた。

「本当に、イクスに似てるよ。あんた。」

「え! イクスとは違うと思うよ。」

「いいや。似ているね、絶対に。イクスと。」

「ちょ、ちょっと待って。イクスは何も無い所で転んでるよね。私は何も無い所では転んだ事はないよ。」

「へぇ〜。」

センは少し苦笑いすると、治療の途中なのに立ち上がった。

「ちょっと! まだ、治療は終わってないよ。」

「平気。ありがとうね、ユン。」


センはユンに背を向けて森に入って行った。
森に入るとセンはその足を止めた。
近くの木に寄りかかっている緑の髪の人を見るとセンはため息をしていた。

「何の用かな? ジェハ君。」

ジェハはバレていたかとのように笑っていた。

「いやね〜。センちゃんってユン君を守る為にいつも怪我してるよね?」

その事かと分かるとセンはため息を付いてジェハとは別の木に寄りかかった。

「そうね。ヨナ姫にはハク君や君達がいる。けど、ユンの場合はついでに守っている感じがするの。それは少し可哀想よ。それに私も龍の一族。ユンとは違い私は怪我をしてもなかなか死ねないのよ。」

「けど、次の子が生まれれば僕たちは力を失くして死んで行く。そうだろ? なら、好きな人には自分の気持ちを伝えようと思わないの?」

「そうね。普通ならね。けど…私は告げる訳にはいけない。まぁ、本当に死ぬなら考えるかもね。」

「センちゃんって変わってるよね。僕達は早くに死ぬ。ゼノ君は別だけどね。」

そう、ゼノは前回の戦いで黄龍の力で死ねない事を証明し、建国神話と伝わる時から何千年と生きているのだ。

「そうね。ゼノ君は他の龍とは違う。けど、それは黒龍である私も同じ。」

「どういう事かな? セン。」

「そのままの意味。まぁ、黄龍とはちょっと違うけど。黒龍は四龍と緋龍王の時代に生まれず、それから暫くしてこの地に力を与えた龍。初代黒龍は千年近くは生きていたよ。他の龍と比べて長生きが出来る。だって私は二代目【黒龍】だから。ゼノ君ことも先代から聞いてるし、一度会っているからね。」

「へぇ〜。」

「私はユンより長生きをしてしまう。けど、彼には本当に好きな人と結ばれてほしいからね。」

センの顔は悲しい目をしていた。
ジェハは彼女の考えを改めていた。
ジェハはユンに振り向いて欲しいから自ら怪我の場所に飛び込んで行くのかと思っていたが、実際は片思いを心にしまい、ユンの幸せを一番に考えていた。
それはまるで、ハクがヨナに恋をしているのと同じと思っていた。
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