番外編

□ノーと言えない俺様
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「ブハッ…!クッ…ククッ…あと…跡部っ…」

「笑うな」

「おまっ…お前それ…」

「触れんじゃねぇ。頼んでやるからこの事には触れるな」

合宿の事前ミーティングを行う為に部室に集まっていた部員達は跡部が鞄から取り出したシャーペンとファイルケースを見た瞬間吹き出してしまい腹を抱えながら笑ってしまった。

「くる…苦しっ…あはは!」

「お…鳳。笑うな。あ…跡部さんに失礼だろう…ククッ」

「なんやねんそんメルヘンチックなシャーペンとファイルケースはっ。おま…お前いつの間に趣味変わったん?ククッ…あ〜、めっちゃ腹痛いわ」

「あはは!このシャーペンなんて凄く可愛いじゃんっ。小さな熊がぶら下がってるC!」

「てめぇらいつまで笑ってるつもりだ。喧嘩売ってんのかよ、あーん?なんならその喧嘩テニスで買ってやってもいいんだぜ。嫌という程お前らのその腕にボールぶつけてやんぞこら」

「ま…まあまあそう怒んなって跡部。にしてもそれは名無しから貰ったのか?」

「だったらなんだ。大体俺様だってな、本来ならこんな物付けたくねえんだよ。何でこの俺様がこんな物付けなきゃならねえんだ」

『遅くなってしまってすみません。榊監督から合宿の資料を持っていくようにと言われて取りに行っていて…あ、景吾君それ使ってくれているんですか?嬉しいです』

「ハッ…当然だろ。お前がくれた物を俺様が使わねえとでも思ってんのか?」

先程まで文句を言っていた癖に名無しの満面な笑顔を見た途端がらりと態度を変え、そして頬を赤く染める跡部に部員達は現金な奴だと呆れた視線を送っていた。
それにしても改めて見ると名無しの持ち物はほぼ全てと言っていい程テディベアの物が多く、見た目とは異なるそのギャップに部員達はどれだけテディベアが好きなんだと呆れる半分微笑ましい気持ちになっていた。

「ねえ名無し」

『はい。どうしましたかジロー君』

「あのさぁ、ずっと気になってたんだけどどうして名無しってそこまでテディベアが好きなの?」

『私の母が裁縫が趣味でよく作ってくれていたんです。あるのが当たり前な環境で育ってきたのでテディベアは私の一部のような物ですから好きとはちょっと違うかもしれませんね』

「へえ、名無しさんのお母さんは裁縫が得意だったんですね。ぬいぐるみの他に何か作っていたりしたのでしょうか」

『ええ、洋服は全て母が作ってくれていました。とても可愛い服ばかりだったのでお見せ出来ないのが残念です』

「ほう。ちゅうか名無しはどない服着てたん?」

『そうですね…不思議の国のアリスのような洋服と言えば分かり易いですか?』

名無しのその言葉に部員達はそれを着た名無しを想像していた。
今だってこれだけ綺麗なのだからきっと幼い頃はかなりの美少女だったに違いない。
その美少女の名無しがアリスの恰好をして自分達の目の前に現れたとしたらどれだけ自分達は可愛さに悶えてしまうのだろうと部員達はにやにやと笑いながら頬を赤く染めてしまっていた。






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