ばくちがーる。

□*1話*
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満月の夜だった。

俺は部活を終えて、帰宅路を歩いていた。

この日は、いつもよりも生温い風が吹き抜けていたのを覚えてる。

電信柱の下、黒髪の女が蹲っているのを見付けた。

具合が悪いのかと思って、話しかけたんだ。

「あの…大丈夫ですか?」

俺の声が、暗い夜道に響いて消えた。

女は微動だにしない。

ただ、微かに何かを呟いている事に気が付いた。

「…なにか、落したんですか?」

もしかしたら、落し物を探しているんだと思って、聞いてみた。

「…」
「……」

女は答えなかった。

段々気味が悪く感じてきて、俺は足早にその場を去った。

ただ、少し気になって振り向いてみた。

気付かれないように、そっと…。

「!!」

女は悍ましい形相で、俺を睨み付けていた。

身の危険を感じて、その場を走り抜けた。

けれど、女はすごいスピードで追いかけてきた。

────………追いつかれる…!!

凄い力で肩を掴まれた。

終わった…そう思った時だった。

ヒュッ……

目の前に、尻尾が2つに別れた猫が現れた。

「…、……」

固まっていると、犬の遠吠えと共に仮面を付けた女の子が現れた。

女の子が何か…短刀?を女に突き刺したと同時に

ガシュッ!!

女の首を大きな犬が噛みちぎった。

断末魔が響き渡り、生温い風がゴゥ…と吹き抜けていった。

「…shit…逃がしたか…」

「奴はまた現れましょう」

『…その時をまた狙わなくちゃ…』

女の子と猫と大きな犬が、会話をしている。

ふと、女の子が俺の方を見た。

『キミは”負”にあてられてしまったんだね…』

仮面越しに聞こえてくる、透き通る様な声。

『ごめんなさい。僕はキミの記憶を弄らなくちゃいけない…』

「Hey 姿を見られた…やるなら早くやろうぜ」

「すまねぇな…”奴”に目をつけられた運命だ…」

俺の中から、黒い何かが出てきた。

瞬間、意識が朦朧として倒れる感覚がした。




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