彩りの世界

□7ハートと白鯨と少女
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アイツの分の朝食を持って俺の部屋へと行けば、アイツは虚ろな瞳を俺に向けた。紅い瞳は、輝きを失って暗い深い紅になった。俺を写し出さない。…みるみる痩せている。

「…食え」
『……いらない』
「もう2日も食ってねぇだろ」
『………食べたく、ない』
「…白ひげ海賊団に連絡した」
『…え…』
「安心できる場所で、安静にしてろ。な?」
『…』

ヒノカに掛けられた呪いは、奴らがコイツの親父に対する”怨み””哀しみ”から出来た、憎しみの塊らしい。俺達には計り知れねぇほどの、暗くて重い呪い。それが、ヒノカ1人に伸し掛る。だからこそ、コイツが安心出来る”家族”の元へ返したいと思った。

『わたしの帰る場所なんて…』
「あるだろ」
『……帰ってもいいの』
「お前が安心出来るならな」
『ろーは、それで満足?』
「…俺じゃ治せねぇから…な」
『…ごめんね…帰らなきゃ…よかった』
「…!」

ポロポロ涙が落ちる。初めて見る涙に、俺はどうする事も出来なくて、ただ隣に座って頭を撫でた。間違いなくコイツは弱ってる。ヒノカが何をした?やり場のない怒りは、俺の中で渦巻いた。

「…好きなだけ泣け」
『ぅ…うぁああぁああん』

思わず抱きしめた。そうしなきゃ、ヒノカが消えちまいそうに見えた。腕の中のヒノカは、以前よりずっと細く痩せていた。顔色も悪くて隈も酷い。魘されている事が多いからか、いつも唐突に飛び起きる。

「白ひげ屋が来るまで寝ろ」
『ん……ヒック…ローも、居ろ』
「俺に命令するな。…居てやるから」
『………ありが、と』

一緒にベッドに入れば、ヒノカは眠りについた。普段なら、絶対ベッドに入れないのにな。

「…相当、弱ってるんだな」

ポツリと呟いた。不謹慎だが、俺は嬉しかった。弱っているとはいえ、俺を頼った。それが嬉しくて仕方なかった。

「……守れなくて、悪かった」

目を赤くして眠るヒノカに、小さく小さく呟いた。


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