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□すれ違う心と溢れ出す想い
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「じゃあお風呂先にいただくね。」
「一緒に入ります?」
「は、入りません!」
(はぁっ…心臓に悪い…)
浴室のドアを閉めてほっと息をつく。
千晶くんと付き合い出してからというもの、私はやっぱり千晶くんのスキンシップの激しさに慣れない。
一緒に住み出した頃から比較的人との距離が近かった彼。
まあそれは私をからかっていたり、彼の戦略に嵌められていたりと様々な理由があっての事だったけど。
それでも時々思うのは、からかいでもなんでもなく彼は私を求めているということだ。
彼の家庭環境を考えればそれも理解出来るけど、正直顔もかっこよくてそれでいてニコニコしながら抱き締められてしまえば私の心臓はきっといずれ使い物にならなくなってしまう。
彼に対してドキドキしてしまうのはどうしようもないけれど、年上だし後輩だし…もっと余裕を持って接したいのは山々なのに、どうにも上手くいかなかった
。
「ふぅ…もっと気持ち引き締めないとな…。」
湯船に頭まで浸かってぶくぶくと泡を吹き出す。
私は好きになった人と結ばれて舞い上がってるのかもしれない。
遠慮なく触れてくれるのが嬉しくて。
でもそれが気恥しくて仕方がなかった。
「名無しさん、温まりましたか?」
「うん。千晶くんも入ってきたら?」
「はい、じゃあ僕も行ってきますね。」
「行ってらっしゃい…っん…」
「ごちそうさまです。」
お風呂から出てソファーでテレビを見ていた千晶くんに話しかけると、千晶くんはニコッと笑って浴室に消えていく…と、思いきやすれ違いざまに私に軽くキスを落とす。
(ううっ…不意打ちにも程があるよ…)
鼻歌を歌いながら楽しそうに出ていく千晶くんを目で追いながら、熱くなった頬を冷ます為にキッチンへと向かった。
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