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□恋人どーこだ!
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「んー、いいお天気!」
晴天に恵まれたアルタリア。天を見上げると雲一つない真っ青な空が広がっている。
「名無しさんちゃーん!」
「ん?」
朝の香りを胸いっぱいに吸っているとどこかから聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「ロベルト?」
「こっちだよ〜!」
窓から身を乗り出して下を見るとそこにはやっぱりロベルトが大きく手を振っている。
「どうしたのー?」
「今から抜け出そー?」
そんな大声で言ってしまえば意味がないのでは?と思うくらい楽しそうに言うロベルトに笑みを返し、私もロベルトに声を返した。
「そんな事言ってるとまたアルベルトさんに怒られるよー?」
「えー、大丈夫…」
「名無しさん様の言う通りでございます。ロベルト様。」
「げっ…」
まあそうなるだろうとは思っていたけれど、突然現れたアルベルトさんに苦い顔をするロベルトが言い合うのが面白くて、私は耐えきれずに吹き出してしまう。
「もー、名無しさんちゃん笑ってないで助けてよ〜!」
「流石に距離がありすぎるよ。頑張ってねー!」
「ひどーい!」
「まだ執務が残っているというのにひどいも何もございません!さっさと行きますよ!ロベルト様には"頑張って"いただかないといけませんから。」
「いっ、痛いよアル〜!ちょ、名無しさんちゃーん、また遊びに行くからねー!」
「まだ懲りていないのですか!…名無しさん様、お見苦しい所をお見せして申し訳ございません。失礼致します。」
アルベルトさんに引きずられるようにして去っていくロベルトに心の中で謝ってから、でもほんの数分だけでもロベルトに会えただけで心が踊った。
「名無しさんちゃん…」
午後になり昼食を済ませた私は仕事に戻るため城の中を歩いていた。
すると聞き逃してしまいそうなほどの小さな声が聞こえて、私は訳も分からずに辺りを見回す。
「あっ、ロベル…」
「しっ…」
廊下の隅で小さくなっていたロベルトは私の声に焦りながら腕を掴んで死角に紛れ込んだ。
びっくりしながらも声のトーンを落として話しかけると、ロベルトは周囲に人がいないのを確認してから口を開く。
「えっ…ロベルト?どうしたの?」
「…アルから逃走中っ!」
「またそんなことして…」
「だってアルったらこれでもかーってくらい仕事持ってくるんだもん。疲れちゃうよ〜」
「でもそれってロベルトが放置してたものじゃ…」
「違うよ!絶対わざとだって…!」
「……ロベルト様?」
反論するのに少し大きくなってしまったロベルトの声が聞こえてしまったのか、どこかからアルベルトさんの声がしてロベルトは咄嗟に両手で口を塞いだ。
「…全く、どこに行かれたんだ…帰ってきたら仕事を倍にして………」
近付いてきた足音に2人で体を固くしながらアルベルトさんが遠ざかるのを待つ。
「…ん?」
"ビクッ"
かなり近い距離でアルベルトさんが立ち止まり、見つからないように息を殺しているとアルベルトさんは諦めたのか、その足音は遠ざかっていった。
「「はぁ……」」
同時に安堵の息を吐き、ロベルトと顔を見合わせて笑い合う。
「良かった〜、バレなくて。」
「でも戻った方が良いんじゃない?アルベルトさん仕事倍にするって言ってたよ?」
「うーん、それはそうだけど…でも今から帰っても倍にされるなら楽しんでから倍にされた方が良くない?」
ポジティブに物事を考えられるのはロベルトの良いところではあるけれど、流石にアルベルトさんには通用しないと思う。
そう思いつつもロベルトと一緒にいれるかもしれないと思うと強く言えなくて、曖昧に笑ってみせた。
「よし、決めた!デートしよ?」
「本当に良いの?」
「うん!俺が名無しさんちゃんとデートしたいの!」
にこにこしながら私の手を引くロベルトは、シーっと唇に人差し指を立てていたずらに笑い、いつ作ったのか分からない新しい抜け道を通って城の外に抜け出した。
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