Fate/stay night
□目前の太陽
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アーチャー・エミヤ
召喚され、現界するまでの短い間、奇妙な夢を見た
彼女が死ぬ夢だ
だが、過去に私といた彼女はすでに死んでいた
年齢も若い・・・昔の彼女なのか?
目が覚めるとそこは、柳洞寺の敷地内だった
この時代を、私はよく知っている
イギリスから帰ってきた彼女が狙われているとわかった時、私はどうすればいいのかわからなくなった
少なくとも昔のオレなら、彼女を守ろうと必死になっていただろう
だが今はどうだ?
私に、彼女を守る資格があるのか?
『私はいつでも、士郎の味方だよ』
『今度は、私があなたを守るから。守られてばかりなのもね、辛いんだよ?』
『・・・・・・ほら・・・泣かない、の・・・・・・正義の味方は・・・簡単に、泣いちゃ・・・・・・ダメ、だよ・・・』
『ご、めん・・・・・・先、逝くね・・・・・・でも、忘れないで。私、は・・・何があっても・・・どこにいっても、ずっと・・・・・・士郎の味方だから・・・だから・・・笑って。ね?』
いつでもどこでも、どんな時でも、彼女は笑顔を絶やさないようにしていた
まあ、本当にヤバい時は別だったが・・・
私は何度、その笑顔に救われてきたかわからない
死ぬと言うその瞬間までも、彼女は笑っていた
笑ってオレを見上げていた
最後の最期まで・・・自分自身にもオレにも、笑っていることを望んだ
オレといられて良かった、と・・・最後の最期まで笑って言った
最後の最期まで、笑って逝った・・・
あの時のオレがどんな感情を抱いたのか、正直今になってもわからない
アーチャー「・・・・・・美命・・・」
召喚されてから、私は彼女の名前を呼んでいない
呼んではいけない・・・
呼べば私はーーオレは、きっと後戻りできなくなる
世界の抑止力という名の掃除屋になってから思ったのはーーあぁ、彼女はこうならなくて良かった・・・彼女に関して思ったのは、それだけだった
彼女は安息を得られただろう
それだけが、オレ個人の唯一の救いだ
凛「アーチャー!!」
アーチャー「?」
凛「ちょっと降りてきて!もうひとつ、決まったことがあるから!」
アーチャー「・・・?」
やけにテンションの高い・・・ああ、いや、いつもの事か・・・
そんな凛の声が届いたから何事かと思えば・・・
アーチャー「契約?」
凛「そうよ。その方がお互いのパラメーターもわかるし、魔力供給もできる。サーヴァント個人の魔力だけよりも、私達術師から供給を受けた方がいいでしょう?」
居間に戻ると、美命と桜以外の全員がそこにいた
だがどうやら、あの2人も承諾の上での話らしい
アーチャー「まあ、だろうな・・・」
凛「だから、契約をしようって話になったわけよ。桜にはライダーとの再契約をお願いしたいから、今のところフリーでいてほしいの。で、士郎とはセイバーが契約。あとは・・・」
アーチャー「私とランサーの契約をどうするか、か?」
凛「その通りよ。で、契約者なんだけど・・・・・・アンタ、美命と契約しなさい。私はランサーと契約するから」
アーチャー「な・・・・・・何を言い出すんだ君は!?」
凛「何よ、嫌なの?美命が嫌いなわけ?」
アーチャー「嫌だとかそうじゃないとか、嫌いだとか嫌いじゃないとか、そういう問題ではなかろう!」
凛「じゃあどういう問題なのよ?」
アーチャー「どうもこうも・・・!」
凛「ハァ・・・・・・あの子を桜と部屋に返して、正解だったわね」
呟くように言い捨てると、睨むような視線をアーチャーに向ける
凛「アーチャー。アンタ、いつまで八月一日美命を避けるつもりなの?」
アーチャー「!」
凛「わかってるんだからね。アンタが美命を避けてることくらい。どうして避けるのよ?」
アーチャー「・・・・・・」
凛「・・・・・・何か、後ろ暗い事でもあるの?」
アーチャー「・・・・・・・・・・殺した」
凛「え?」
士郎「殺した?」
セイバー「アーチャー、それは一体どういう・・・」
アーチャー「私が!・・・・・・私が・・・彼女を・・・・・・殺した」
その言葉に、全員が沈黙した
当然と言えば当然だ
私が彼女、八月一日美命を殺したと言っているのだから
直接手を下していないにしろ、あれは私が殺したも同然だ
守れなかったのだから・・・
いや、正確には守られたのだ・・・オレは
凛「・・・・・・だったら」
アーチャー「?」
凛「だったら尚更!アンタは美命と契約しなくちゃ駄目よ!」
言いながら詰め寄ってきた凛は、なぜか今にも泣きそうな顔をしていた
ああ、その顔は前にも見た気がするな
凛「美命と契約して、今度こそあの子を守ってあげなさいよ!死なせちゃったからって避けるなんて、そんなの間違ってる!」
アーチャー「・・・勘違いをするな、凛。私は死なせたではなく、殺したと言ったはずだ」
凛「アンタは美命を殺せない。気付いてないの?美命を見る時のアンタ・・・・・・すごく悲しそうなのに、懐かしそうで・・・優しい目をしてるのよ」
アーチャー「ーー!」
士郎「お前が殺したんじゃない。守れなかったんだろ?だからお前は自分を責めて、殺したと言った」
アーチャー「・・・ふんっ。知った風な口を利くな、衛宮士郎」
士郎「美命を守りたい。その気持ちだけは、お前と同じだから。わかるつもりだ」
アーチャー「・・・・・・」
凛「・・・・・・いいわ。だったら無理矢理にでも契約させてやる!」
アーチャー「な!?おい、凛!どこに連れて行く気だ!?」