Fate/EXTRA CCC
□第一章
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桜「もしもし、こちら保健室です。優姫さんが目を覚ましました。精神、肉体、共に異常はありません」
??「それは良かった。では、早速ですがこちらに来ていただけるよう伝言をお願いします」
桜「あの・・・・・・優姫さんはまだ目覚めたばかりですし、今は挨拶だけで・・・」
??「申し訳ありませんが、その余裕はありません。事態は一刻を争います。それに彼女なら、ボクが言わずとも勝手に歩き回ります。ボクの知っている優姫有彩という人は、いつまでも大人しくしている性格ではありませんから。目が覚めたのならすぐに行動するでしょう。この新しくも旧い校舎を調べ回った後、生徒会室に来るよう言ってください」
そこで、桜と誰かの通信は終わった
桜「あの・・・・・・今の通信、聞こえていましたか?」
有彩「ええ。なんか色々と癪に障るけど、目が覚めたからには行動しなきゃね。何もわからないからこそ、早い現状把握は必要だしね」
桜「・・・・・・分かりました。生徒会室は二階に上がって左手側の教室です。また、優姫さんのサーヴァントは二階に上がって右手側の教室に待機してもらっています」
有彩「ん、ありがとう。ちゃんと回収しとく」
桜「え・・・か、回収、ですか・・・?」
有彩「そ、回収。ところで、なんでアーチャーを別室待機させといたの?」
桜「そ、それはその・・・・・・ちょっと目の毒というか・・・優姫さんの知ってる姿と違うというか。長い眠りからの目覚めだけでも精神がいっぱいいっぱいですから、席を外してもらったんです」
有彩「そ、そう・・・」
桜「・・・・・・あの。とにかく、驚かないでくださいね?」
有彩〈目の毒とか、私が知ってる姿と違うとか、驚くとか・・・・・・どんな状態なのよ、あいつは?〉
1・2年の教室
有彩〈右側の教室だから・・・・・・ここ、かな?〉
ガラッ
アーチャー「状況説明は終わったようだな。見たところ体に異常もない。君が無事で何よりだ。では早速、探索を始めるとしようか。普段通りに、何を見ても驚かない冷静さでね」
背後から聞こえてきた、落ち着きのある声ーーアーチャーのものだ
有彩「アーチャー!・・・・・・だよね?」
振り返ると、そこにはこめかみにシワを寄せて立つ、予想外の服装のアーチャーがいた
そのためか、思わずアーチャーかと確認してしまった
アーチャー「逆に聞くが、私以外の誰だと思う?」
有彩「うん、そうですね・・・・・・で、その服どーしたの?」
アーチャー「・・・・・・断っておくが、私の趣味ではない。こちらに引き込まれた後、目を覚ますとこの姿になっていてね。基本システム変更による、強制的なドレスコードのようだ。スーツ姿でなければ入店できない、というアレだよ」
有彩〈どれだよ!?〉
ちなみに今の彼の服装は、素肌の上に赤い革製のジャンパーを羽織っていて、黒いズボンをはいている
アーチャー「桜君の言葉によると、サーヴァント用の拘束具らしい。主に精神面のものだろう・・・・・・全く。このルールを作ったものが何者か知らんが、一言いってやりたい気分だ。なんだって肌をここまで露出させる!?首輪も意味不明だ!更に、このタグにはなんと入っていると思う?」
有彩「さ、さあ?なんて入ってんの?」
アーチャー「RED ONE CHANCEーーレッドワンチャン、ときた!バカにするのもほどがある!」
有彩「ブフッ・・・」
女として目のやり場には困るものの、アーチャーに最大の説得力と屈辱を与える恐るべしセンスと言えるからか、吹き出しそうになるのを必死に我慢する
・・・・・・少し吹き出したが
アーチャー「・・・・・・何かね、その顔は。私には何かを堪えているように見えるが・・・・・・言いたい事があるなら言ってみたまえ」
有彩「・・・・・・首輪のチェーン、なんで外したの?」
アーチャー「ーーなに?」
有彩「とぼけないでよ!首輪にチェーン、ついてたんでしょ?」
アーチャー「そんなものはない。まだ頭が鈍っているのか?それとも元々おかしいのか?」
有彩「うっそ!?絶対あると思ったのに〜。チェーンを付け忘れるとか、色々と見えてまずいじゃない!・・・・・・マスターとしてこんな危険物・・・どうすればいいかしら・・・」
アーチャー「どうもこうもない!そりゃあ見えるだろう、裸なんだから!危険物とか、失礼だな君は!君も年頃の女性だ、この衣装ではやりづらかろうと気を遣っていたオレが阿呆のようじゃないか!」
有彩「あ、気にしてくれてたんだ?」
アーチャー「気にしないわけがないだろう!」
有彩「・・・・・・ブフッ、ふふ・・・」
アーチャー「?」
有彩「ふふふ・・・あはは・・・!冗談よ、そこまで本気にしなくてもいいのに・・・ふふふ」
アーチャー「ーーむぅ!?」
有彩「どんな見た目であれ、アーチャーはアーチャーなんでしょ?それなら、私としては問題なし。まあ、だから、その・・・・・・せめてリラックスしてほしくて、冗談を言ったつもりだったんだけど・・・・・・ごめんね?」
アーチャー「そ、そうだったのか・・・・・・いや、謝るのは私の方だ。すまん、気を遣ってくれたのはそちらの方だったのに・・・・・・ともあれ、安心してくれ。実はね、鎖だけは先程外しておいたんだ。これならなんの問題もないだろう?」
有彩〈ーーなんですと?〉
アーチャー「ーーさて。話も落ち着いたところで、今度こそ探索を再開するぞ。言うまでもないが異常事態だ。気を引き締めて進んでくれ」
有彩「わ、わかってる・・・」
アーチャー「なに、緊張は必要だが恐れは不要だよ。私は君の剣であり、盾でもある。存分に酷使してくれ」
有彩の頭に手を置き、軽く撫でながら不適な笑みを浮かべるアーチャー
なぜか彼のその行動は、有彩に安心感を与えた
忘却した記憶の中にあるかもしれないが、それはまるでもう何度も繰り返されてきた、彼なりに彼女を安心させる行動のような気がした
アーチャー「まずは生徒会室だ。桜君の話では、君より早く目覚めているマスターがいるそうだ」