Fate/stay night
□サーヴァント
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美命の魔眼が開眼してから数日
エルメロイU世が衛宮邸に姿を現した
美命「日本も日本人も嫌いだって言ってたくせに、また来たんだ?」
エルメロイ「事態が事態だ。来ないわけにもいかないだろう。で、目の調子はどうなんだ?」
美命「まだコントロールは無理だけど、今は凛がくれた眼鏡でどうにかなってる」
エルメロイ「・・・そうか。ところでアーチャー。確かお前達が最初に現界したのは、柳洞寺だったな?」
アーチャー「そうだが?」
エルメロイ「そうか・・・・・・私は一度、第四次と第五次に関わった場所を当たってみようと思う。何か手掛かりがあるかもしれないからな」
美命「なら私も・・・」
エルメロイ「お前は彼らといるべきだ」
美命「エルひとりで大丈夫なの?」
エルメロイ「お前よりは大丈夫だ。場所の把握もしているし、第四次に関しては誰よりも私の方が詳しいだろう」
美命「それはそうだけど・・・」
エルメロイ「彼女のことは任せる」
士郎「え?あ、はい」
美命「着たばっかりなのに・・・忙しないなぁ」
凛「それよりさっきの、どういう意味?第四次に関しては、誰よりも詳しいって」
美命「ああ、そっか。知らないのも無理ないか。エルは第四次聖杯戦争の参加者にして、現在の唯一の生き残り」
凛「あの人が!?」
美命「全然そうは見えないけどね」
桜「でも、どうして美命先輩がそのことを?」
美命「当時は私もまだ、日本にいたしね。エルとはその頃からの知り合いだったし。母さんとも仲良かったみたいだから」
凛「へぇ。不思議な縁ね」
美命「私もそう思う」
凛「さて、話変わるけど・・・妙だと思わない?」
士郎「妙って?」
凛「あれからもう何日か経つのに、あっちからの動きがまるで無い」
桜「もしかして、美命先輩の魔眼を警戒しているんじゃあ・・・?」
凛「それでも妙だわ。魔眼なんて、すぐに使いこなせるような代物でもないし。だったら完全に制御される前に襲って、美命を殺した方が楽だと思わない?」
桜「それは、まあ・・・」
士郎「確かにそうだな」
凛「そう考えると、ここまで静かなのは逆に怖いくらいよ」
美命「・・・・・・何かを仕掛けてくる前の下準備中、とか?」
凛「考えられなくも無いけど・・・どうかしら・・・」
アーチャー「警戒しておくべきだろう」
美命「アーチャー」
アーチャー「あの女が何を企んでいるかはわからんが、ろくでもない事なのは間違いないだろう」
凛「それもそうね」
ランサー「ろくでもない事ってのは同意見だが、夜の闇に紛れて来る可能性もある。そっちも用心しておくことだな」
凛「わかってるわよ」
だが、それからさらに3日
特に何かが起きる事はなかったが・・・
アーチャー「・・・・・・」
美命「やっぱり、ここにいた」
アーチャー「?」
屋根から辺りをボーっと見ていると、美命が上ってきた
アーチャー「どうした?こんな所に上ってきて。危ないぞ」
美命「そうは思ってないくせに」
アーチャー「・・・・・・」
そう、本当は危ないなどとはあまり思っていなかった
彼女は昔から屋根に上るのが好きで、そこから空を見上げるのを特に好んでいた
何度も危ないと言いながらも付き合っていた頃を思い出し、アーチャーは自然とため息が出ていた
どうやら本当に、もうすでに見透かされているようだ
それでも真実を言わないのは、きっと・・・
『士郎が口ごもる時は、大抵なるべく話したくはないけど、話す必要性を感じている時。だから、士郎が話してもいいと思うその時に、ちゃんと聞かせてね』
この約束があるからだ
美命「そこ、いい?」
アーチャー「駄目だ。と言っても座るのだろう、君は」
彼の言葉にクスッと笑うと、隣に腰掛ける
美命「昔もこうして、士郎と空見てた」
アーチャー「・・・・・・」
知っている、とは言いたくても言えなかった
美命「あなたの英雄としての成り立ちは、なんとなくわかってる。契約しているサーヴァントの過去を夢で見るっていうけど。アレ、本当だったんだね」
アーチャー「・・・ああ」
美命「ごめんなさい」
アーチャー「なぜ謝る?君が見ようとか見たいとか思って見たわけではあるまい。勝手に人の過去を見てしまったと罪悪感を抱くのは、少々違う気もするが?」
美命「・・・・・・よくわかったね。私が言いたい事」
アーチャー「ああ・・・・・・嫌になるくらい、君の事はよく知っている。昔からな」
美命「・・・・・・うん。そうだね」
アーチャー「やはり、気付いていたのか」
美命「なんの事?私は知らないよ、何も」
そう言いながらも、彼女の顔は笑っていた
穏やかな、優しい笑みだ
本当は全てわかっているのだろう
アーチャーと衛宮士郎が同一人物である事を
彼の英雄としての成り立ちを
それは自然と、過去を知っている事になる
待つつもりなのだろう、衛宮士郎が話すまで・・・
アーチャー「【ボソッ】いかにも君らしいな・・・」
苦笑しながら、彼はそう呟いていた