Fate/stay night

□覚醒
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結局、手掛かりらしきものは何も見つからず、美命とアーチャーは衛宮邸に帰ることになった



少し落ち込んだ様子で隣を歩く美命



昔からの癖で、つい彼女の頭に優しく手を乗せたアーチャー



落ち込んだり、寂しそうにしている美命を見かける度、衛宮士郎はこうして彼女を慰めていた



頭に優しく手を乗せ、これまた優しい手付きで撫でる



すでに彼の癖となってしまっているそれに、美命は反応せずにはいられなかった



目が見えていないからこそ、わかったのかもしれない



この感覚を、美命の体と心はよく知っている



この感覚は衛宮士郎から感じるもの、そのものだと言える



なぜ・・・?



だがその感覚は、次に感じたものに阻害された



美命「アーチャー・・・」



アーチャー「ほう・・・今度は感じ取れたのか?」



美命「隠す気のない殺気を堂々と向けられれば、さすがの私も早々に気付くよ」



アーチャー「だろうな。これで気付いていなければ、さすがの私もフォローのしようがないと、君の鈍感さに呆れているところだ」



美命「・・・・・・なんか、すっごいムカつく」



アーチャー「私にムカつくのは君の勝手だが、更に勝手極まりない者が来るぞ」



そう、どんな理由かは知らないが、八月一日美命を殺そうとしている者達がいる



アーチャーが言っているのはその者達のことだ



アーチャー「さて・・・最悪な手札が来なければ良いが・・・」



呟くように小声で言われたそれは、次の瞬間に完全に打ち砕かれた



目の前に飛び降りてくるようにして現れたのは、黒い巨体ーー



美命「厭な予感・・・」



アーチャー「すでに的中している・・・敵の中でも一番厄介な相手・・・・・・バーサーカーだ!!」



と同時に、バーサーカーの雄叫びのような声が響く



アーチャー〈マズいな、ここでバーサーカーとは・・・・・・奴の宝具「十二の試練(ゴッド・ハンド)」は常時発動型。奴を12回殺らなければ倒せん!だが・・・〉



スッと視線を動かし、横目で美命を見下ろす



アーチャー〈私が単騎で挑んだところで、12回殺し切るのは無理か。何より、彼女が無防備になる上、庇いながら戦えるような相手でもない。ここは・・・〉



美命「あのバーサーカー・・・真名はヘラクレスだったよね?」



アーチャー「そうだ」



美命「なら、迷ってる場合じゃないよね」



アーチャー「?」



美命「凛から出された条件通り、すぐに撤退した方がいい。まあ、私が言うのもアレだけど・・・」



凛から出された3つの条件



絶対にでしゃばらないこと

敵に遭遇したら必ず逃げること

何かあればすぐに連絡を入れること



美命「ヘラクレスの宝具は、大体想像がつく。例え私がまともな状態だったとしても、単騎で仕掛けるのは得策じゃない。ここは撤退した方がいい」



アーチャー「・・・懸命な判断だ」



美命「わっ!?」



直後、美命の身体を横抱きに抱えたアーチャーが地を蹴る



突然のことに驚いた美命は、思わず彼にしがみ付く



今は余計なことは考えるな・・・!



しがみ付いてきた美命に様々な想いを抱くが、とにかく今はこの場から離れることが先決だと言い聞かせる



だが柳洞寺の門から階段を下りようとした時、美命が何かを感じ取った



美命「っ!待ってアーチャー!!」



アーチャー「!?」



反射的にその言葉を聞き入れ、階段に一歩足を掛けた状態で止まる



次の瞬間、石階段からわき出るようにして幾つもの黒いノイズが現れる



アーチャー「くっ・・・!」



美命「・・・・・・」



ざわっ・・・



ざざっ・・・



美命「っ!?」



一瞬だけ見えた、赤黒い線ーー



その線がなんなのか、美命にはわからないようでわかる



だが認めたくないと思えるその線



アーチャー「どうした?」



美命の身体が一瞬震えたのに気付き、アーチャーは声を掛ける



だが美命は答えない



アーチャー「・・・・・・大丈夫だ。君は必ず、私が守る」



ここから逃げる術が思い浮かばないことに恐怖し震えた、と思ったようだ



美命の耳元で、アーチャーがそう言ったのが聞こえた



身体を抱えている彼の手に、ぐっと力が込められたのがわかった



美命「・・・・・・違う・・・・・・違うのよ・・・アーチャー・・・」



アーチャー「?」



彼女の呟きを聞いた時、鎖が辺りのノイズを一掃した



アーチャー「!?」



??「間に合ったようですね。ご無事で何より」



アーチャー「お前は・・・ライダー!」



桜「ライダー!」



凛「ランサー!」



ランサー「わかってらぁ!」



士郎「セイバー!」



セイバー「はい!」



アーチャー「なぜ・・・」



桜「すみません、遅くなりました!」



凛「ライダー見つけたのはいいけど、再契約してたら遅くなっちゃったのよ!アンタ達が遅いから、何かあったと思ってきたけど・・・」
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