Fate/stay night

□目前の太陽
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衛宮邸に戻ってきた5人は、ランサーを加えて居間で話をし始める



とは言っても、ランサーの話はアーチャーのものとほぼ同じだった



ひとつだけ違うのはーー



凛「あの黒い影みたいなのに、触れた?」



ランサー「ああ。正確には、掠っただけだ。情けねぇが、避け切れなくてな」



アーチャー「で、何かわかったのか?」



ランサー「俺はあいつらと違って、完全に呑まれたわけじゃねぇからな。あいつらよりかは情報は少ねぇ」



凛「構わないわ。今の私達には、どんなに些細なものでも有力な情報だから」



ランサー「・・・・・・俺がアレに触れて知ったのは、八月一日美命って名前の女の事と、その女を殺さなきゃならないって事ぐらいだ。理由はわからない。が、アレに触れるか呑まれるかすると、それが頭に流れ込んでくるようだ」



アーチャー「なるほど。呑まれたサーヴァント達は、その目的を完全に固定化される、と言うことか」



ランサー「生憎と、俺は触れただけなんでな。それ以上の事はなんにも知らねぇんだわ。アレに触れた時・・・感覚的に言えば、頭に無理矢理情報をねじ込まれた、って言い方がしっくりくるな。そんな感じがして、正直気持ち悪かったな、ありゃあ」



凛「頭に無理矢理情報を、か・・・」



美命「その例え・・・案外、的を射てるのかも」



桜「どういう事ですか?」



美命「科学的な話になっちゃうんだけど・・・・・・記憶って言うのは、一種のメモリーだと言われてるの。記憶という名の記録。つまりあれは、影って言うよりも情報を持った何かだと考えるべきかもしれない」



士郎「その情報を、サーヴァントに植え付ける・・・インストールしてるって言うのか?」



美命「召喚者も無しに召喚されたって事は、ちょっと荒かったのかも。それが原因で、記憶障害を起こしたサーヴァント達に、再び情報を与えた」



アーチャー「・・・・・・大体読めてきたが、そうなると召喚者はキャスターが言った通り、人間ではないな」



美命「あの影は、さっき凛が口走ってたノイズって言葉がしっくりくると思う。仮にあれを、“ノイズ”と呼称しておきましょう。サーヴァントを召喚したのも、ノイズという情報の塊を生み出したのも・・・・・・おそらく、この世界と聖杯」



セイバー「仮にそうだとして、それらとミコトになんの関係があるのでしょうか?命を狙われるような関係など、ミコトには無いように思えるのですが・・・」



美命「私にもわからない。これはあくまで仮定の話だし。ランサーは何か知らない?」



ランサー「・・・・・・いや。そこまでは俺も知らねぇな」



美命「そう・・・」



彼女に向けていた視線を反らして答えるランサーに、アーチャーは疑問を感じた



だが、あえてこの場では聞かず、ランサーに向けていた視線を美命に戻す



凛「とにかく、サーヴァントが1騎増えただけでも儲けものだわ。美命を守るの、協力してくれるんでしょうランサー?」



ランサー「あ?ああ、まあ・・・構わねぇけどよ」



凛「私達がこれからする事は、ライダーの捜索と合流。今回の騒動の原因探し。そして最優先事項は、美命を守ること」



右手の指を立てながら、ひとつひとつの事項を確認していく凛



最優先事項を口にした後、士郎と桜が同時に頷いた



それを見た凛が視線の向きを変えると、その先にいたアーチャーも頷く



凛「決まりね」




















ランサー「邪魔するぜ」



アーチャー「・・・邪魔だと思うのなら下りろ」



ランサー「そう言うなよ。ちょっくら話があってな」



衛宮邸の屋根で見張りをしているアーチャーが、不機嫌そうに言った



だがランサーはいつもの軽そうな感じで歩み寄ってくる



アーチャー「その話とやらは、今しなければならない程のものか?」



ランサー「あの美命ってお嬢ちゃんの事だ」



アーチャー「・・・・・・」



ランサー「お前、あのお嬢ちゃんとなんかあっただろ?」



アーチャー「なぜそう思う?」



ランサー「目ぇ見てりゃあ一目瞭然だろ?あのお嬢ちゃんを見る時のお前、なんか雰囲気が違うんだよ。懐かしそうな目で見てやがる。昔の・・・いや、“今のお前にとっての昔の馴染み”か?」



アーチャー「・・・・・・そんなところだ」



ランサー「・・・・・・お前、この世界とお嬢ちゃんの命・・・選べと言われたらどっちを選ぶ?」



アーチャー「・・・?」



ランサー「・・・・・・悪ぃ、忘れてくれ。あのお嬢ちゃん、大事にしてやんな。あんな度胸のある女、そうそういねぇぞ?同じ戦場に立ちたいなんて、普通は言わねぇよ」



アーチャー「彼女は昔からああだ、何も変わっていない。何度置いて行こうとしても、必ずついて来た。何度引き離そうとしても、必ず傍に戻って来た・・・・・・そういう女(ヒト)だ、彼女は」



ランサー「・・・・・・そうかよ。まさかお前から惚気話が聞けると思わなかったぜ、ごちそうさん」



アーチャー「なっ!?だ、誰が惚気話など・・・!!」



明らかに動揺しながら、アーチャーは屋根から早々に去っていくランサーを睨んだ



アーチャー「・・・・・・何をしに来たんだ、あいつは・・・」
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