Fate/EXTRA CCC
□第一章
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??「・・・・・・脳波の正常活動を確認しました。アルファ波、ベータ波平常。覚醒状態です。ーーぱい。先輩。この声が聞こえますか?落ち着いて、ゆっくり瞼を開けてください」
有彩「・・・・・・んっ・・・」
瞼を開け、視界に入ったのは保健室だった
SE.RA.PH(セラフ)では経験した事のない、地上ではもう失われた、古い作りの保健室
有彩はベッドに横になっていて、傍らには白衣の少女が彼女の様子を窺っている
彼女は桜
保健室に配置された、マスターの健康管理担当AI
有彩「・・・・・・ありがとう」
桜「ーー」
挨拶代わりにお礼を言うと、少し頬を赤らめた様子で見てくる桜
有彩「?・・・・・・どうかした?」
桜「あ、いえーーごめんなさい、なんでもないんです。優姫さんになんの問題もありません。自分でもわからないんですけど、優姫さんの声を聞いたらホッとしてしまって・・・・・・きっと、他の皆さんより昏睡状態が長かったからですね。とにかく、目覚めてくれて嬉しいです」
有彩「・・・・・・」
無言で体を起こす有彩に、桜は言葉を続ける
桜「アバターの反応はまだ鈍いでしょうけど、すぐに元の調子に戻りますよ。もう立ち上がる事もできるはずです」
有彩「・・・とりあえず、色々と聞きたいんだけど・・・」
桜「あ、はい。質問はごもっともです。でも、その前に確認させてください。優姫有彩さん。貴方は、自分が誰なのか分かりますか?」
有彩「私は優姫有彩。仮設定では、月海原学園に通う生徒。あらゆる願いを叶える『聖杯』の使用権を手に入れるために、月に侵入した魔術師(ウィザード)の一人」
桜「その、魔術師というのは?」
有彩「電子ネットワークに精神、人格ごと潜入(ダイブ)できる特別なハッカーの事でしょ?」
桜「そうです。魔術が途絶えた現代において、唯一、魔術理論を継承する人々の事です。ところでーー今は西暦何年で、ここは何処ですか?」
有彩「西暦2030年。あー、ここはー・・・・・・月、かな。疑似霊子演算装置ムーンセル・オートマトンの中。地上の魔術師達の多くが夢見る、『聖杯』が眠る天上の海。まあ、制服から校舎まで、何もかもが古くさいけど」
月海原学園で着ていた制服とは違い、セーラー服に身を包んでいる自身を見下ろす
桜「はい。貴方達マスターは聖杯を求めてこのムーンセルにやってきました。これを聖杯戦争と言います。弱き者に聖杯は与えられません。貴方達は自分が生命として優れている・・・・・・最強である事を証明しなくてはならない。その方法として、ムーンセルは貴方達に戦闘を代行するソースを与えました。それはなんですか?」
有彩「・・・・・・サーヴァント」
ようやく思い出したためか、少し申し訳なさそうに答える
ムーンセルの用意した予選を突破した者は、令呪と共に聖杯戦争に参加する資格を与えられる
サーヴァントーー過去の英雄を再現した使い魔ーーと契約し、使役するマスターとなる
勿論、優姫有彩もそのひとりだ
桜「そこまでは問題ないようですね。じゃ、じゃあ・・・・・・これが、一番大事なコト、なんですけど。あのですね?優姫さん、聖杯戦争中のコト、少しでも憶えていますか?」
有彩「そんなの当たり前ーーあれ?」
桜「やっぱり・・・・・・他の皆さんと同じですね。自分が誰なのかは憶えているけれど、聖杯戦争中の記憶は思い出せない・・・・・・落ち着いて聞いてくださいね。優姫さんは『自分がマスターである事』しか思い出せない、記憶障害状態なんです」
有彩「記憶障害・・・?」
桜「乱暴な言い方ですけど、優姫さんは聖杯戦争開始時の初期状態にリセットされたようなものなんです。貴方は昏睡状態が長かったですから、もしかすると本当に、自分の名前しか憶えていないのかも・・・・・・あれ?という事は、もしかして・・・・・・あの、優姫さん?私の名前、分かりますか?」
有彩「大丈夫、憶えてるよ。間桐桜、でしょ」
桜「はい。間桐桜です。改めてよろしくお願いしますね。あ、間桐シンジさんとは無関係ですよ。私の名字は聖杯戦争ごとに、参加者の一人からランダムに拝借するものなので。コホン。とにかく、急ぎ足でしたが優姫さん自身の手で状況を確認していただきました。今私にできる事はこれぐらいです・・・・・・もっと力になりたいんですけど、もう私にはなんの力もありません。皆さん同様、私も記録の検索機能がロックされていて・・・・・・本当にごめんなさい」