雪の夢

□真夜中のドライブデート2
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『も、もしもし・・・』


恐る恐る電話に出た。

せいなからの電話なんて初めてじゃない。

なのに緊張で手と額に汗が滲む。



「もしもし?ゆうみちゃん?」


いつも通りの、ハキハキとしたせいなの声。



『はい・・。ど、どうされましたか?』


こちらもなるべくいつも通りに応える。



「どうされました?じゃないよ。何で先に帰っちゃうの。」



せいなの口調は少し強く、でも怒っているという感じでは無かった。



『す、すみません・・・っ!ご挨拶しようと思ったのですが、ちぎさんもお忙しいようでしたので・・・』




嘘をついた。



本当はたくさんの娘役に囲まれているせいなに会いたくなかったのだ。



「・・・・・・・・」



数秒の沈黙。




「本当に?」



『・・・え?』



「本当にそれだけ?」



『は、はい・・・。』


せいなの問いかけに動揺し、心臓が激しく動く。

まるで目の前にせいなが立っていて、自分の嘘を見透かされているかの様な空気に一気に息苦しくなった。





「はぁ・・・・。

いつからゆうみちゃんは嘘つきになったのかな?」



『は、はいっ?』




・・・・・嘘つき??




「まぁいいや。ゆうみちゃん、明日の予定は?」


訳も分からないままとんとんと話が進んでいく。



『いえ、特には・・・
あ、お昼頃に美容室に行ってきます。』



「そう、じゃあとびっきり可愛くしてもらってね?

夜迎えに行くから。」



『はぁ・・・。


・・・はいっ!?

いっ・・・今、何と仰いましたかっ・・・?』



電話越しに堪えるような笑い声が聞こえた。



「だーかーらっ、明日の夜は私とデート!!

拒否権は無し!!」



『デート・・・、ですかっ///』



使い慣れない単語に言葉が詰まる。



「そうだよ。デート。
明日20時頃迎えに行くから。
寒いから暖かい格好で待ってて。分かった?」


せいなも恥ずかしいのか早口で捲くし立てる。



『はい・・分かりましたっ///』



「じゃあ明日ね。おやすみ。」



プツッ・・



通話の切れたケータイを持つ手は震え、耳はじんじんと熱かった。



入浴剤を入れるのも忘れてお風呂を済ませ、1時間以上かけて明日の洋服を選ぶ。


すでに時間は夜中の2時を回っていた。



『あぁ…眠れない・・・・』


ベッドに入ったものの、頭の中ではせいなの顔や声がチラついてどうにも眠れない。



そもそも2人で出かける事なんてしょっちゅうある。

他の組を観劇したり、買い物に行ったりだってする。


なのに、ただ【デート】言われただけでこんなにも特別に感じるものなのだ。



結局ゆうみが眠りに付いたのは4時過ぎだった。
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