雪の夢

□そろそろ気づいて
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『ちぎさん!聞いてください〜♪』


「どうしたの〜?ゆうみちゃん」





愛しい人の声が今日も稽古場に響く。

いつまでも聞いていたくなるような、心地いい声。




『実はですね!今日とっても素敵な夢を見ましてっ!!///』


「なに?そんなに顔赤らめちゃうようないやらしい夢見たんだ?笑」


『ちっ、違いますっ!!///』




あんなに顔赤くしちゃってさ。


素敵な夢って何?

私に一番に聞かせてよ。



いつからだろう、こんな風に思うようになったのは。


尊敬するちぎさんの相手役、ゆうみちゃんを想うようになったのは。







『いやらしい夢なんかじゃありません!!

とっても小さな劇場で、小さな舞台の上で

お客様もいないんですが…
ちぎさんと2人っきりで踊る夢です…照』



「そんなの宝塚劇場でやろうと思えばいつだって出来るじゃない。」

ちょっといじわるな顔と声でちぎさんが言う。



『違うんです〜!そうじゃないんです〜〜!』

と口を尖らせるゆうみちゃん。



可愛いな。

素直にそれだけを思った。



そうか、夢の中でも2人なんだね。

私は一度も夢に現れた事無いのかな。


いつか聞いてもいいだろうか。

聞くだけなら許されるだろうか。




トップコンビとして踊り、歌い、演技をする2人を毎日見ていると

嫌でも愛し合ってるのが分かる。

仕事としてではなく、恋人として。


2人が堂々と恋人宣言をしたわけでは無いがみんな暗黙の了解だ。


そしてみんなが応援している。



(私もいつか純粋に心から2人を応援できるのかなぁ)



一人言のようにボソッとつぶやく。





「だいもんにも話してみなよ。絶対笑われるから。笑」



自分の名前が聞こえてはっとした。




『聞いてください〜〜〜!!』



君が私だけを見てこっちに走ってくる。


手を広げて抱きしめてしまおうか。

そのまま首に手を添えてキスしてしまおうか。



一瞬で想像してみたが、その後の展開も安易に想像出来てしまい諦めた。




「どうしたの?ゆうみちゃん?」


私の目だけを見て

私のために言葉を紡いで


『あのですねっ、夢を見たんですが・・・』


話の内容なんか聞こえない。



君の赤らんだ唇が可愛くて

その動きを追うので精一杯だ。




『・・・・・で、っていう夢だったんです!!

どう思いますか??素敵ですよねっ??』



あぁ、終わったのか。


「うん、すごく素敵。いい夢だと思うよ?」


(素敵だよ、本当に。君がね。)




『ですよねっ??

ちぎさ〜ん!素敵ですって〜♪』



元の場所に戻ろうとするゆうみちゃんを見送る。



(行かないで。)



(私の傍にいて。)





「だいもん!ゆうみちゃんの味方なの〜!?」


ちぎさんの声がした。




「はい、すみませーん!!笑」

いつも通りに返事をする。




いつかこの気持ちを伝える日が来るのかな。


叶わないと分かっていて伝えられるほど私は強くないのに。




「だいもん!3人で昼ご飯行こーぜ♪」



『何が食べたいですか♪?』




幸せそうな2人を見るのは正直ツラい。


でも、好きな人の笑顔が見れると思えばそれも悪くないのかな。




「お二人さんに合わせますよ〜!」




(気付いてくれるかな、そろそろ


私を意識してくれたらそれでいいから・・・)




「あ、やっぱりゆうみちゃんの好きなものにしましょう!」



『え、そんなっ・・・いいんですか?///』



そう、こうやって少しずつ、ね?





fin

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