ぼくらのねーちゃん。

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「ただいま〜」

私はおそ松の腕に包まれながら、ガラリと戸が開く音を聞いた。おそ松はというと、私を解放する気配はなくずっと私を抱きしめている。

「? 誰もいないのー?」

近づいてくる足音とともに聞こえてくる、また聞き慣れた声。この声は…

ガラッ

「!?おおおそ松兄さん、まゆ姉さん!?なっなな何してんの!?!?」
「あ、おかえり〜チョロ松」

シコまt…チョロ松!!!!!!

「いやいやいや!おかえり〜じゃないから!何抱き合ってんの!?まだ昼だよ!?」
「え?何、昼だよって。じゃあ夜ならいいんだ?さっすがシコ松、言うことまでド変態
「シコ松言うな!!!ったくもう、ほら、離れて!」

顔を真っ赤にしたチョロ松が、私の身体からおそ松を引っぺがす。ああ、折角生おそ松の温もりを感じていたのに。

「まゆ姉さん、大丈夫?おそ松兄さんに変なことされてない?」
「はー?変なことって何だよチョロ松、言ってみろよ」
「おそ松兄さんは黙ってて!!」


こ、こ、これは速度松!!!

心配そうに私の顔を覗き込むチョロ松をよそに私のすっからかんの頭はそんなことを考えていた。

それにしても、本当に違和感なく姉さんって呼んでくれるなあこの人たち。私本当にこの人たちの姉さんになっちゃったのかな。いや、ならせていただいたのかな。でも、どういう経緯でこうなったか全く分からないし、そもそも私仕事とかも…どうなってんだ。

「あ、あの〜〜、おそ松、チョロ松」
「ん?」
「私さっき、あたま…変な打ち方しちゃったみたいで、記憶があんまりないんだよね。みんなの名前とか、分かるんだけど。仕事とかってどうなってたかなー…って」

おそ松とチョロ松がしばらく私の顔を見たかと思うと、2人で顔を見合わせ、2人の顔はみるみるうちに青ざめていく。

「きききき記憶喪失ゥ!?何!?本当にそんなことあんの!?」
「お、落ち着けチョロ松!まゆねーちゃん、それまじ?」
「う、うん…」

信じられん、と言わんばかりの表情で見つめてくる2人の顔は本当にそっくりで、こいつらほんとに六つ子なんだ、なんてぼーっと考えていたら、二人は私の生い立ちから何から何まで説明してくれた。

どうやら私は彼らの二つ上で、仕事場の名前を聞いたらここに来る前と同じ職場の名前で、仕事は変わっていないようだった。上手くできてんな。

「わたしどんなお姉ちゃんだった?」

彼らの見てきた私はどんなんだったんだろう。どうしよう、めっちゃデキる女とかだったら…。両手に持てないほどの男を纏わせてる女だったらどうしよう…。

「まゆねえちゃんはねー、俺ら六つ子の中でも俺のことが特に大好きで毎晩毎晩それは激しく「人が記憶なくしてるの良いことに適当なこと言わない!!

…まゆ姉さんは、僕たち弟のことを大事に想ってくれて、全員に平等に接してくれる優しい姉さんだよ」


この子…!!!!!!(ブワッ)

いやあ泣かせるねえチョロ松くん!!!何が真面目系クズなキャラだよ!真面目だよ彼は!!キングオブ真面目!いつも六つ子数えるとき一番最後になっちゃってごめん反省します君が今日からオンリーマイエンジェ

「あと、身も心も寒い独身OLってよく言ってた」

ここでその再現度いらねえだろマジで。

「とりあえず、僕らは姉さんの記憶喪失をわりと素直に受け止められた。けど」

チョロ松が神妙な面持ちで私をじっと見つめる。

「トッティはいいとして、あとの3人に説明して理解してもらうのは非常に…(めんどくさい)」
「確かに〜」

確かに(共感)

「まゆ姉さん、姉さんのフォローは僕と、頼りないけどおそ松兄さんが頑張るから、他の奴らには黙っておいた方がいいんじゃないかな…記憶喪失だなんてバレたらほんと大変だよ(大変面倒くさい)」
「わ、わかった…!」
「えーっ!!まゆねえちゃん、記憶喪失なの!!!やっべー!!まじでそんなことあんの!?!?じゃあこれ覚えてない!?ありが特大サヨナラホームラァァアン!マッスルマッスルゥ!ハッスルハッスルゥ!」
「ふっ…シスター、俺がシスターの記憶のカケラ、拾い集めてやろう」
「ギャァァァア!!!!!!」


あっめんど。

なんの前触れもなく、青パーカーと黄パーカーの二人がチョロ松の背後に現れた。…ああ、チョロ松の言っていた(わけではないが心の声がだだ漏れだった)ことってこういうことだったというわけである。


つづく。

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