ぼくらのねーちゃん。

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ああ〜〜最高、ほんっとうに最高。こんな普通の冴えない独身OLの癒しなんて二次元しかないんよ。ほんとに。

まあ、私だってまさか自分がアニメにハマるなんて思ってもなくて、たまたま同僚の女の子(腐女子)が勧めてくるからどんなもんかと見てみれば、もう沼よ。そこは底なし沼。

おそ松さん。

六つ子の話なんですけどね、みんな個性がそれぞれあって、みんな違ってみんな良い的な?あ、今私めっちゃ詩人みたいな良いこと言ったわ、ポエマーにでも転生しよっかな、ガハハ。そんなことはどうでもよくて、六つ子ちゃんたちが今のわたしの唯一の癒しってわけ。わかる?

勧めてもらったのが腐女子ちゃんということもあって、わたしもそれなりにそっちのほうに片足突っ込みかけてるのもまた事実。特に決まった推してる子はいない。だって、みんな可愛い!!!!!あぁ私のエンジェルズ!!!!


そんなわけで今日も仕事がひと段落つき定時で退勤して帰宅しているわけ。定時で帰れるなんていつぶりだよふざけんな!嬉しいわ!


身も心も寂しい独身OLは、毎晩缶ビールを飲みながらおそ松さんのDVDを寝るまで延々と見続けて1日を終える。は、我ながらクズ極めてんな。良い加減良い相手見つけんとな…。


なんて考えながら缶ビールを買うべくコンビニに入る。と、え。おそ松フェア!?!?なにそれ聞いてないから。ふうん、対象商品買うとグッズが貰えんのね。

全員揃えるほど持ち金を持っていなかったので、対象商品と思われるお菓子と缶ビール、つまみをカゴにぶちこんでレジに運ぶ。


「対象商品含んでおりますので、こちらのグッズプレゼントさせて頂きまァす。何色に致しますかァ?」

「あ…じゃあマイエンジェル……じゃなくて、赤で」


無難におそ松にしよう。おそ松って無難って思われちゃいがちだよね長男だし赤いし。王道的な。からあげくんレギュラー味的なね。


店員が赤色の箱を乱雑に袋に詰める(もっと丁重に扱えしばくぞ)のを見届け、コンビニを後にする。

なになに、缶バッジか…。

こんなん貰ってしまうなんて、もう末期OLだよなあハハッ泣かせやがって!から笑いをして缶バッジの箱に指をかけ、開けようとした時


カッッッ

「マブォッ!!?!?(眩しい)」


突然直視できないほどの強い光が、私の心もろとも冷え切った体(うるせえ!)を包み込んだ。私はその時死を覚悟した。だって、死ぬっしょ。こんな目が眩んだら。あ、せめて、結婚は一回くらいしたかった。あと欲を言えばその相手は金持ちが良かった。

ふわっと体浮く感覚。ああもう、だめだ…。



ドッスーーン


「でェァッ゛!!!!(痛い)」

何事ォ!?…って、ねーちゃんかよ、びっくりしたぁー…」

いてぇ!ケツがいてぇ!臀部が!これケツついてる!?ケツをさすりながら、まだ眩む目を抑える。後ろからネーチャンという、聞き慣れない単語。

新手の勧誘ですか…弟なんていた覚えはないんですけど、なんて思いながら後ろを向くと

「ぅ、ん?……お、おそ、おそまつ?」

「そうだけど?見れば分かるだろぉー?え、ねーちゃん大丈夫?記憶飛んだ?」

「マイエンジェル…?」

「まーたそれぇ?ほんと俺らのこと好きすぎでしょねーちゃん。ほら、立てる?」

何度目をこすってもそこにいるのは、いつも画面越しに拝んでいた松野おそ松であって、彼の視線もまた明らかに私を捉えていて、ねーちゃんという言葉は私に投げかけられているようだった。あ、とうとう私、死んだんだ。でも、天国に来れたみたい。だってマイエンジェルがいるんだもん。えへへ、嬉しい、ほっぺつねってもいたくないよね、だって死んだし…



ギュム

「でェァッ゛!!!!(痛い)(二度目)」


「ねえちゃん!?!?」

夢でも、天国でもないようだった。

「ま、ま、まって。ここは、どこ。わたしは、だれ。」

「ねーちゃんふざけてんの?それとも本当に記憶なくした?ここは家だよ。そんで、松野まゆでしょ、思い出した?」


は?何言ってんのコイツ。


いや、でも見るからに呆れた顔してるし、本当なのかもしれない。な、な、なんだこの状況分からなすぎる!姉ちゃん!?わたしが?おそ松の?てことは六つ子の?いやいやいや待ってよ〜〜そんなの妄想じゃんよ〜〜。理解できねぇよ〜〜。分からないけど、でも、この場はひとまず空気を読んだ方が良さそうだ。

「あ、あはは。ごめん、おそ松。ちょっと頭打って変になってたみたい。ごめんね〜」

「もう気をつけろよー。俺らの大事な可愛いねえちゃんなんだからさ」

ぎゅ

「ホワッツ!?!?」


状況が読めなすぎる、読めなすぎるが、私を抱きしめてるのは紛れもないおそ松そのものだった。あ、わたし、死んでもいい。南無阿弥陀。

これからどんな生活をおくることになるのな微塵も考えもせず、ただただおそ松の腕に包まれた感覚に身を委ね、嬉しさのあまりチビりそうになるのをどうにか堪える私だった。


つづく。





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