素敵頂き物!

□今も昔も
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資福寺の一角。
そこで会ったのは髪を結い上げ、背筋を伸ばし座する青年。
青年の声は低くそれでいて優しさを含ませていた。

「お初にお目にかかります…本日をもって梵天丸様の傅役として参りました片倉小十郎景綱と申します」

膝に手を置き、軽く頭を下げた傅役。
その傅役とは対照的に胡座をかきそっぽを向く隻眼の少年。
これが二人の始まりであった。



今日の資福寺は梵天丸の従兄弟でもある時宗丸が来ているせいかいつも以上に賑やかになるのだが、この二人が揃うとろくなことがない。

「梵…俺、書き物飽きた」

「…実は……俺も飽きたところだ…やるか」

「うん、やる!」

今は住職が出払っていて傅役である片倉小十郎がいるのみ。
そう、今から最大の悪戯が始まる。

彼らの悪戯を知らず、そろそろ飽きる頃だろうと踏んだ小十郎は、茶と茶請けを手に彼らの部屋まで来たのだが、何かがおかしい。
襖は両方とも開けて風通しよくした筈。
何故閉まっている?
梵天丸様と襖を手にかけたところで、小十郎の目の前を石が通りすぎていく。
ぽちゃんと音を立て池におちた様を見て小十郎は青ざめた。
襖には所々黒に塗りつぶされ、それを石を投げ、破いて遊んでいる二人。

「見ろ!時!お前のマスは俺が頂いた!」

「じゃぁ、次は俺ね」

石を掴んだ手を挙げ投げようとしたが、開けられた襖を見て二人は凍りつく。
襖の近くに立っていたのは青筋をたてた見たことのない鬼…。

「こ、こじゅ…ろう?」

「てめぇら書き物もせず何やってやがる」

ミシッ…と鳴いた襖にはヒビが入る。
そして、聞いたことのない低く怒りを込めた傅役の口調。
ゴクリと二人の喉が鳴り、首筋には冷や汗が流れていく。
幼心に二人は思う。
普段優しいヤツ程恐ろしい事はないと…
それは今も変わらずなのは伏せておこう。




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