銀色物語〜短編〜

□非番〜銀時ver〜
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俺は、今熱烈な片思いをしている。
相手は泣く子も黙る真選組で副長なんか務める物騒な奴で、目付きは悪いわ、口は悪いわ、足癖は悪いわ、性格もなかなか悪い、そんな一見すると良いところなんて無いような、だが見目は物凄く良い男。

…そう、俺が片思いをする相手、真選組副長の土方十四郎はれっきとした男だ。

もちろん、俺も初めは認めたくなかった。
でもなんだかんだ腐れ縁みたいに繋がりができていく内に、俺は気付いたんだ。
仲間と居るときの穏やかな表情に。
自分の決めた大将の為に何でもできる芯の強さに。
仲間を、江戸の民を思う優しさに。
フォローの達人なんて言われるくらい気配りができる事に。
そのくせ自分の事に関しては変に鈍感で、自分の事なんて二の次三の次にしてしまう、そんな不器用さに。

口が悪いのは照れ隠しだったり、わざと嫌われようとしてたり。
目付きが悪いのは元々鋭いのを、優しい大将と反対に、自分を恐怖の対象にすることで組を纏める為にいつも気を張ってて。
でもなんだかんだ本当は優しいことが案外みんなにバレてて。
でもバレてる事に気づかずすっかり騙せていると思い込んでるアホさ加減も。
警戒心バリバリの癖に、変なところで無防備で。

そんなアイツの内面に気付いた時、俺はアイツに惚れたんだと思う。
気づけば街中で黒い隊服を探して、見つけたときに内心嬉しくてドキドキして、ついいそいそと近付いて行って、それがアイツじゃないとこっそり落胆して。
でも思いかけずばったり会ったりして柄にもなくドキドキしてアイツのちょっとした仕草にいちいちときめいて。
(あー、可愛いなちくしょー)
なんて思って。
なのに会うたびに喧嘩になってしまうのが嫌で、でも口を開けばバカにしたような呵責しか出てこない自分に嫌気がして。
ジャンプを読みながら気づけばアイツの事を考えてて。

そこまで来て初めて、俺はアイツに惚れてると認めた。


でも俺は気付いたと同時に落胆した。

だってきっとアイツは男には興味なんて無いだろうし、そもそも会うたびに喧嘩になるような間柄の俺には嫌悪感は抱きこそすれ、好いてくれるなんて到底思えなかったからだ。

でも、な。土方。

俺は好きなものをむざむざ諦めるような、出来た男じゃない。
ジャンプのために大晦日に忍者とガチバトルできる男だ。
なにもしないで諦めるなんて嫌だ。

そこで俺は考えた。
既成事実をつくってしまおうと。

見ればアイツは案外流されやすいみたいだし、何か有ったときに逃げてしまうような責任感のない男じゃない。
寧ろ責任感は人一倍強いだろう。

最低な考えなのは自覚している。
それでも、諦められない位、俺はアイツが好きなんだ。

ごめんな、土方。
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