短編

□雨と涙
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外はどしゃぶりの雨。こういう日は家に居るのが1番いい……ということで、松野家には、ニート達全員が揃って暑苦しくなっていた。


おそ松「あぁ〜〜〜暇だ!」


ごろんっと床へ大の字に寝転び、大声を出すおそ松。


チョロ松「うるさいよ、おそ松兄さん。」


トド松「そうだよ。成人男性が揃いも揃って平日の昼間から家で暇を持て余してるなんて、本当クズだよね〜。」


一松「トド松、それブーメラン。」


おそ松「ん?カラ松、出掛けんの?」


カラ松がいつものイタイ格好で2階から降りてきたのを見て、おそ松が聞いた。


チョロ松「え、外凄い雨だよ?あ、もしかしてこんな日までカラ松girl探し?」


カラ松「…あぁ、いつ運命のエンジェルが舞い降りるかわからないからな。」


トド松「ほんっとイッタイよねぇ!!」


一松「チッ、行くならさっさと行けよ。クソ松。」


カラ松「あ、あぁ。行ってくる。」


クルリと玄関の方へ向く。


チョロ松「あ、カラ松ー。分かってると思うけど、行くならちゃんと傘持って行きなよー!」


カラ松「あぁ、サンキューブラザー。」


チョロ松「はいはい。」


ガララ、バタン


十四松「カラ松兄さん行っちゃったねー。」


おそ松「そうだなぁ。行っちゃったなー。」


十四松に同意しつつ、おそ松が立ち上がった。


チョロ松「どうしたの?おそ松兄さん。」


おそ松「んにゃ?別に〜?」


のろのろと玄関へ向かう。


トド松「おそ松兄さんも出掛けるの?」


おそ松「……。」


トド松「? おそ松兄さん?」


おそ松「あー…やっぱ俺も出掛けてくるわ。」


トド松「え?」


ガララ!バタン!!


勢い良く扉を閉めたことで、大きな音が家中に響いた。


トド松「ちょ、えー…」


チョロ松「何?どうしたの?」


チョロ松が求人誌から顔を上げた。


トド松「わかんないけど、なんか急に飛び出して行っちゃった。」


チョロ松「え、どうしたんだろ?」


トド松「さぁ?どうせ、パチンコの新台入荷だったの思い出したとかじゃない?」


・・・




おそ松「ハァ、ハァ…くそっ!どこ行ったんだよカラ松のやつ…。」


雨の中、おそ松はカラ松を探して走っていた。


その手の中には、自分の傘だけでなく、もう1つ…カラ松の傘もあった。


おそ松「あ、居た!って、雨の中突っ立って何してんだ?あいつ…」


橋の真ん中で、空を見上げたまま、動かない。遠くて顔はよく見えないが、おそ松は直感的に


おそ松「もしかして…泣い、てる…?」


そう、思った。


その瞬間、カラ松の元へと走りだした。


おそ松「カラ松!!!!」


おそ松の声にか、おそ松が居たことに対してか、どちらにかは分からないが、カラ松は凄く驚き、振り向いた。


カラ松「お、そ松…?」


おそ松「ハァ、ハァ…お、前!こんなとこで突っ立って何やってんだよ。傘も持たずに!!チョロ松にも言われてただろ!?」


おそ松は肩を弾ませながら、半ギレで言う。


カラ松「す、すまない…。追いかけてきてくれたのか。」


おそ松「そーだよ!感謝しろよなーもう!!めっちゃ走ったんだぞ!!!」


キレながらもズイッと傘を差し出す。


カラ松「あ、ありがとう。おそ松。」


まだ、泣いているような、ぎこちない笑顔で話すカラ松。


おそ松「って、もうびしょ濡れじゃん。傘さしてももう今更だな。」


カラ松「そ、それもそうだな。悪い、迷惑かけて。」


おそ松「迷惑、ねぇ…。お前、さっき泣いてた?」


カラ松「え!?い、いや、そんな訳無いだろう。」


おそ松「俺にはそう見えたけどなぁ…。」


よく見てみると、カラ松の目尻にはまだ水が残っていた。とっくに顔についていた雨も拭いて、カサだってさしているというのに。


おそ松「……。」


カラ松「お、おそ松?」


カラ松の顔が今度は不安そうな顔に変わる。


おそ松「……っ」


パシャ、とカサが地面へと落ちる。


おそ松は、カラ松を抱きしめていた。


カラ松「!? お、おそ松…?」


カラ松はいきなりの事で、驚きを隠せていない。


おそ松「お前さぁー…。俺を頼れよ。雨が降るたびに、こんなとこに泣きに来るんじゃなくて、俺のとこ来いよ。お前のたった1人の兄ちゃんなんだよ?俺。」


カラ松「おそ松…。なんで、泣いてるって…。」


おそ松「そりゃ、長男だからなー!なんでもわかっちゃうのよ。だからさー、全部1人でかかえ込むなよ、カラ松。」


カラ松「っ!……おそ松、ぐすっ。おそ、まつぅ…。」


おそ松「はいはい。」


さっきまで、おそ松がカラ松を強く抱きしめていたのに…今はカラ松がおそ松を泣きじゃくりながら、強く抱きしめていた………。

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