シャーロック・ホームズ

□"彼女"の脳内記B
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"彼女"の脳内記B

ただ"勘"のようなものなのだ。
根拠も、論理性もまったく無い。

だけど、欠けている論理性はホームズさんが埋めてくれているから、バランスはいいのかなとも思い始めていた。
それに、221Bでこんな会話があった。



「それにしても、シュヴェルツはすごいなぁ!でもホームズとはまた違ったすごさだよ」
「それは僕も同意見だね」
「そ、そんな……たまたまですよ、本当に。だって私は、ホームズさんが提示してくれる基盤がないと何も……」
「基盤から四方八方に伸ばせるのも、一つの能力だと思うよ」
「ホームズさん……!」



ホームズさんとワトソンさんも、私が事件に関わる際にしていることが、役立っていると褒めてくれている。
ホームズさんは事件を解く際も日常でもそうなのだが、事実は事実のままきちんと認めるところがある。
よく言っているのだ、依頼人には他人の評価や、固定観念は持たずにありのままで向かい合うことが大事だ、と。

その面も私は何度も見ているため、心の底から嬉しいと思えた。
でも、褒められたらすぐに喜んでしまうから、馬鹿のようだと思われていないか心配だ。



「シュヴェルツの活躍も、ホームズとうまく織り交ぜて記すよ!」
「はい……!よろしくお願いしますね!」
「そういえば、最近の事件がまだ書けてなかったんだ」
「あ……私たち、なるべく邪魔しませんから……ご自由にお書きください」



私が加わった後、三人で遭遇した事件のことを思い出したのか、急に熱くなってワトソンが机に向かい始めた。

話してもきっといい返しは来ないだろうと思って、放っておくことにした。
その代わり、ソファに座っていたホームズさんのところに向かった。



「ホームズさん、ロフトのほうでワトソンさんを待っていませんか?」
「……それもそうだね。話したいこともあるし」
「?話したいこと……ですか?」



私から提案したのが、かえって私が首を傾げるおかしな状況で、ホームズさんとロフトに上った。
そういえば、最近私専用のベッドが追加されて、ソファで寝るとかベッドで寝るとかで悩まなくなった。

それぞれのベッドに、話しやすいよう向かい合って座った。



「ふふ……私、有名になってしまいました」
「結構だけど、悪影響がなければいいね」
「どういうことですか?」
「有名になることはいいことばかりでもない」



表情を変えずに、ホームズさんがそんなことを言った。
顔を窺うだけでは、どのような感情や意図を含ませて言ったのかわからない。

悪影響……事件に巻き込まれたり、だろうか。
それがわかることは当分無いだろうが、一つだけ絶対的な自信があった。



「私、よくわかりませんが……ホームズさんとワトソンさんがいるので、大丈夫です!」
「!」
「守ってくれるという安心感があるのです。ホームズさんは、特に」



ホームズさんが傍にいると、守られているような安心感があるのです。
 

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